不思議なピアニストが来日し、公演を行う。オランダのヴィレム・ブロンズ。おそらくは最後の来日になるだろう。長老の上に、もともと彼は決して華々しく舞台活動をするタイプではないからだ。
演奏は全く独自なものである。完璧なテクニックを求めるとしたら、期待はずれを味わうだろう。彼はミスも多い。また、イヴェント的な楽しさを求めるとしたら、満足できないだろう。
彼の表現は「存在の絶対的孤独」と言えばいいだろうか。内面をただよう音は、優しくて、深い。そしてそのまま狂気にも入ってゆく。そのようなシューベルトであり、ベートーヴェンである。
聴衆はそこに、作られた音楽ではなく、作曲家が今、まさに音を探しだしているような瞬間を味わうだろう。名曲との評価を確立した曲であっても、生まれ出ずる瞬間は、いずれに行くか分からないままに音が立ちあがる。それをブロンズの演奏は体現する。手垢のついたフレーズや既視感のある解釈などは、どこにも無い。
今回は10月31日(金)19時、すみだトリフォニー 小ホールでハイドン《 アンダンテと変奏曲 》、ベートーヴェン《ピアノ・ソナタ 第32番》、シューベルト《ピアノ・ソナタ 第21番》を弾く。
他に静岡市のルードウィッヒホールでベートーヴェンの後期ソナタを(10月27日)、ヤマハ銀座でハイドンのレクチャーコンサートを行う(11月8日)。
文:梅津時比古
ヴィレム・ブロンズ ピアノリサイタル
静岡公演
2024.10/27(日)15:00 ルードウィッヒホール
曲目
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第28番 イ長調 作品101
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第30番 ホ長調 作品109
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第31番 変イ長調 作品110
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第32番 ハ短調 作品111
チケット申込/問:静岡プロムジカの会事務局
promusica1994@icloud.com 090-9182-5221
東京公演
2024.10/31(木)19:00 すみだトリフォニーホール 小ホール
曲目
ハイドン:アンダンテと変奏曲 ヘ短調 Hob.XVII:6 op.83
べートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第32番 ハ短調 作品111
シューベルト:ピアノ・ソナタ 第21番 変ロ長調 D.960
チケット申込:https://peatix.com/event/3939607
問:info@airartcommunity.com 070-2795-3177(月~金 9:00-17:00)
*中学生、高校生 先着30名無料招待