シュトックハウゼンをはじめ現代音楽のスペシャリストとして知られ、バッハやベートーヴェンにも系統立てて取り組み、その成果が高く評価される近藤伸子のリサイタルシリーズ。今回は、今年生誕150年を迎えたシェーンベルクにフォーカスする。
シェーンベルクが20歳で書いたロマンティックな初期の作品から、無調を経て12音技法に至るまでの創作の変遷を辿る。同時に来年が生誕140年のベルク「ピアノ・ソナタ」やウェーベルンの12音技法による「ピアノのための変奏曲」を取り上げることで、新ウィーン楽派のピアノ曲を俯瞰する内容だ。近藤の卓越した技巧と知的なアプローチが、彼らが生きた時代を映し出す。さらにシェーンベルクがアメリカ移住後に作曲した「ナポレオンへのオード」が興味深い。馬場武蔵の指揮で、松平敬が痛烈な批判を含むバイロンの長編詩を語り、佐藤まどか、辻愛結実、衛藤理子、河野文昭の弦楽四重奏にピアノが加わる。独裁者ヒトラーへの批判を重ね合わせたと言われる激烈で刺激的な作品だ。
文:柴辻純子
(ぶらあぼ2024年10月号より)
近藤伸子 20世紀のピアノ曲 IX ―シェーンベルク再考―
2024.10/30(水)19:00 東京文化会館(小)
問:東京コンサーツ03-3200-9755
https://www.tokyo-concerts.co.jp