夢を追い続けて——NY在住・名倉誠人(マリンバ)が60歳記念リサイタル

 ニューヨーク在住のマリンバ奏者、名倉誠人が生み出す音は、オーケストラのような多種多様な響きが印象的で、原始的な木の音色に奏者が編み出すヒューマンなぬくもりが加わり、聴き手の心の奥にゆったりと染み込む。その彼が60歳を記念し、「Aspirations:夢を追い続ける者」と題したコンサートを開く。プログラムはJ.S.バッハの無伴奏作品に加え、委嘱作品のピアノとの二重奏、マリンバとバリトンのための新作で構成され、それぞれ日本初演/世界初演というこだわりの内容だ。

 「長年対峙してきたバッハは大切な存在です。この作曲家の作品はマリンバで演奏しても、奏法や様式が理解できていれば大丈夫なのです。本当に強固な音楽だと思います」

 過去の取材でこう語っていた名倉は、自身のマイルストーンを意味するコンサートで、バッハの無伴奏作品をいかにマリンバで演奏するかを探求する。名倉自身の編曲による組曲第4番(原曲:チェロ)とソナタ第3番(原曲:ヴァイオリン)を演奏し、その多面性を披露。リハーサルでは、ホールの響きを瞬時にとらえ、完璧な準備をするという。

 これまで内外の作曲家への委嘱も積極的に行い、世界初演も数多く手がけたが、今回もバッハに続いてそれらが披露される。ピアノとの二重奏2曲では、室内楽的な空間を目指す。バリトンとのデュオでは、声との共演で、マリンバの新たな表現世界を探求する。

 「現代の作曲家と共同で作品を作り上げ、世に送り出す活動はとても意義深いことです。自分のそうした姿勢を、次世代のマリンバ奏者に興味をもってもらえたら嬉しいですね」
文:伊熊よし子
(ぶらあぼ2024年10月号より)

名倉誠人60 マリンバ・リサイタル Aspirations:夢を追い続ける者
2024.10/28(月)19:00 東京文化会館(小)
問:ムジカキアラ03-6431-8186 
https://www.musicachiara.com

他公演
2024.10/26(土) 神戸新聞松方ホール(078-362-7191)