近年、アジアのクラシック音楽界の成長は著しい。日本フィルの首席指揮者として活躍するカーチュン・ウォンはシンガポールの出身で、ヨーロッパでも評価を高めている。また、マケラ以上の俊英と期待されるタルモ・ペルトコスキはフィンランド人だが、 フィリピン人の母をもつ。かれがフィリピンの音楽界にも目を向けたら、面白いことが起きるかもしれない。
アジアのオーケストラもやはり躍進している。日本にいながらにしてその演奏を聴ける貴重な機会となってきたのが、文化庁芸術祭主催の「アジア オーケストラ ウィーク」である。
アジア太平洋地域からオーケストラを日本に招く催しで、2002年から続けられてきた。これまでは東京中心だったが、今年は初めて京都で開催され、カーチュン・ウォンの母国を代表するシンガポール交響楽団と、京都市交響楽団が、それぞれに演奏会を行う。
シンガポール響を指揮するのは音楽監督で、1949年オーストリア生まれの老匠、ハンス・グラーフ。エレーヌ・グリモー独奏のラヴェルのピアノ協奏曲 ト長調、ベートーヴェンの「運命」などに加えて、地元の若手作曲家コー・チェンジンの「シンガポールの光」も演奏する。一方の京響は、大友直人の指揮でブラームスの交響曲第1番に加え、伊福部昭や宮城道雄など日本人の作品も取りあげる。新世代の箏奏者で、作曲家・今野玲央としても大活躍のLEOの登場もききものだ。1200年の古都にアジアの響きを聴こう。
文:山崎浩太郎
(ぶらあぼ2024年10月号より)
アジア オーケストラ ウィーク 2024
2024.10/19(土)16:00 シンガポール交響楽団
10/22(火)19:00 京都市交響楽団
京都コンサートホール
問:日本オーケストラ連盟03-5610-7275
https://www.orchestra.or.jp/aow2024/