東京文化会館 《響の森》Vol.54 メンデルスゾーン&ラフマニノフ

躍進著しいマエストロと日本を代表するヴィルトゥオーゾが超名曲で共演!

左:川瀬賢太郎 ©Yoshinori Kurosawa
右:若林 顕 ©Burkhard Scheibe

 少し前まで「若手」とか「新進」と呼ばれていた演奏家がいつの間にか、「中堅」「巨匠」の域に達したことに驚く瞬間が、ままある。9月30日、東京文化会館主催、東京都交響楽団の演奏会《響の森》Vol.54に出演する指揮者の川瀬賢太郎(1984年生まれ)は40代、ピアニストの若林顕(1965年生まれ)は60代が目前に迫っている。2人とも20代初めに頭角を現し、国内外で第一級のキャリアを築いた。

 川瀬は26歳で名古屋フィルハーモニー交響楽団の指揮者に就き、正指揮者を経て2023年4月から音楽監督を務める一方、神奈川フィルハーモニー管弦楽団常任指揮者(14〜22年)、札幌交響楽団正指揮者(22年〜)、オーケストラ・アンサンブル金沢パーマネント・コンダクター(同)などの国内主要ポストを歴任してきた。慣例にとらわれない斬新なレパートリー、どのオーケストラからも生き生きとした表情を引き出す手腕に定評がある。メンデルスゾーンの「イタリア」交響曲では元気溌剌の持ち味だけでなく、経験豊かなマエストロならではの陰影にも富む演奏になるだろう。

 若林は「凄腕の少年ピアニスト」としてテレビを賑わせた時期もあった。しかし以後は、東京藝術大学、ザルツブルク・モーツァルテウム音楽院、そしてベルリン芸術大学で地道な研鑽を続け、2002年にはニューヨーク・カーネギーホールでリサイタル・デビューを果たすなど、一貫して本格派ヴィルトゥオーゾの道を歩む。ひたすらピアニズムの純度を極め、音にすべてを語らせるプロフェッショナルなスキルはラフマニノフの代表作、ピアノ協奏曲第3番でも最高度に発揮され、川瀬&都響との火花散る駆け引きを期待できる。
文:池田卓夫
(ぶらあぼ2024年9月号より)

2024.9/30(月)19:00 東京文化会館
問:東京文化会館チケットサービス03-5685-0650 
https://www.t-bunka.jp