【SACD】ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」&第4番/尾高忠明&大阪フィル

 今やベートーヴェンの交響曲が演奏されるとき、何らかの問題意識や新たな試みを期待せずには聴けなくなっている自分を反省した。ここにはただベートーヴェンの「音楽」がすっくと立っている。尾高忠明と大阪フィルの名コンビによる交響曲全集の第2弾だ。細部の強調や過剰な表現、様式への過度の忠誠から距離を置き、指揮者が考えるベートーヴェンの理想像がオーケストラとの間で自然に共有されている。「英雄」の堂々たる、しかし決して遅滞しない歩み。第4番もカルロス・クライバー以降の疾走感よりは古典的な格調が印象的だ。最良の意味での「中庸」が音楽の力を雄弁に伝える。
文:矢澤孝樹
(ぶらあぼ2026年2月号より)

【information】
SACD『ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」&第4番/尾高忠明&大阪フィル』

ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」、同第4番

尾高忠明(指揮)
大阪フィルハーモニー交響楽団

収録:2025年11月、ザ・シンフォニーホール(ライブ)
オクタヴィア・レコード
OVCL-00902 ¥3850(税込)


矢澤孝樹 Takaki Yazawa

1969年山梨県塩山市(現・甲州市)生。慶應義塾大学文学部卒。水戸芸術館音楽部門主任学芸員を経て現在ニューロン製菓(株)及び(株)アンデ代表取締役社長。並行して音楽評論活動を行い、『レコード芸術online』『音楽の友』『モーストリークラシック』『ぶらあぼ』『CDジャーナル』にレギュラー執筆。朝日新聞クラシックCD評選者および執筆者。CD及び演奏会解説多数。著書に『マタイ受難曲』(音楽之友社)。ほか共著多数。