リプキン・カルテット

カリスマ・チェリストが切り開く新時代のクァルテット

 ©Donald Woodrow
©Donald Woodrow
 近年、公演チラシなどで「新境地」や「新世界」といった宣伝文句を目にするが、「“彼”が率いるクァルテット」と聞けば否応なく期待してしまうし、3月の公演ではそれが必ずや確信に変わることだろう。その“彼”こそ、イスラエルの個性派チェリスト、ガブリエル・リプキンだ。彼の呼びかけで結成されたリプキン・カルテットは、メンバーの人選や試演に長時間を費やし、ソリスティックな実力と個性を備えた4人で構成されている。2008/09シーズンより満を持して始動。ヨーロッパ・デビューは大きな話題を呼び、現在では、世界で注目を浴びているクァルテットの一つとなった。
 日本デビューとなる今回の公演では、ブロッホ「夜」、ドヴォルザーク「アメリカ」、ストラヴィンスキー「3つの小品」、シューベルト「死と乙女」を演奏。いずれも瑞々しさと老獪さが絶妙に絡み合っており、クァルテットの力量や魅力を知るには格好の名曲と言える。なかでも楽しみなのが、「死と乙女」。まるで死神が近づいてくるような重々しい主題で編まれた第2楽章の変奏曲を、彼らがどのように解釈するかに注目だ。
 かつて筆者が行ったインタビューで、「協奏曲は指揮者やオーケストラとの“対話”、ソロは“自分自身を見つめ直す行為”、そして室内楽は親密な“恋愛”のようです」と語っていたリプキン。私たちの想像を遥かに超えた新鮮なアプローチを期待しながら、その感動を全身で満喫したい。
文:渡辺謙太郎
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年2月号から)

3/1(日)14:00 渋谷区文化総合センター大和田さくらホール
問:渋谷区文化総合センター大和田03-3464-3252 
http://www.shibu-cul.jp