新井博江によるライヴノーツ・レーベルへの7年ぶり、4枚目のアルバムがリリースされた。プログラムはベートーヴェンの難解な後期のピアノ・ソナタに始まり、ブラームスの変奏曲、スクリャービンの前奏曲、さらにはショパンのピアノ・ソナタと多岐にわたっており、大変に聴き応えのある内容となっている。ベートーヴェンとショパンのソナタでは確かな形式感を示しつつ、ブラームスやスクリャービンでは演奏家の想像力の羽ばたきが感じられる。そして演奏全体を貫くものは、常に均整のとれた丹精な語り口と透徹したピアニズムである。確信に満ちたテンポ設定にも新井の円熟の境地が感じられよう。
文：大津 聡
（ぶらあぼ2024年5月号より）
【information】
CD『新井博江 ピアノ・リサイタル 2023』
ベートーヴェン：ピアノ・ソナタ第30番／ブラームス：創作主題による変奏曲／スクリャービン：7つのプレリュード／ショパン：ピアノ・ソナタ第3番
新井博江（ピアノ）
収録：2023年9月、王子ホール（ライブ） 他
ナミ・レコード
WWCC-8007 ￥2750（税込）