サン=サーンスが最後に書いたオペラの初の全曲録音だ。嫉妬にかられたデジャニールが、その彼女を捨てて若い女に懸想する夫のエルキュール (ヘラクレス)を破滅へと追い込んでしまうストーリー。山田和樹の手堅い指揮ぶりは、知られざるオペラが長年秘めていた魅力を引き出してくれる。とりわけ豊かな色彩をもつオーケストレーションが浮き彫りに。カタストロフィーでは盛大な不協和音も(20世紀の作品なのだ!)。魅惑的なアリアが多いタイトルロールのアルドリッチの情感あふれる歌唱、さらに初演の地のオーケストラによる蘇演というのもうれしい。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2024年5月号より)
【information】
CD『サン=サーンス:歌劇《デジャニール》/山田和樹&モンテカルロ・フィル』
サン=サーンス:歌劇《デジャニール》
山田和樹(指揮)
モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団
ケイト・アルドリッチ アンナ・ダウズリー(以上メゾソプラノ)
ジュリアン・ドラン(テノール)
アナイス・コンスタン(ソプラノ)
ジェローム・ブーティリエ(バリトン)
モンテカルロ歌劇場合唱団
Bru Zane/ナクソス・ジャパン
NYCX-10466(2枚組+書籍) ¥7260(税込)