豊穣な音世界を描き出す、熟練の匠・名伯楽のピアニズム
リーズやミュンヘン、カサグランデなど数多くの国際コンクールで入賞し、世界的に活躍するピアニストであるボリス・ペトルシャンスキー。ゲンリヒ・ネイガウスやレフ・ナウモフに学んだ彼は、ショスタコーヴィチのピアノ曲全集をはじめとした録音も高く評価されている。ゲルギエフ、フェドセーエフら著名な指揮者との共演も多い演奏家であるが、同時に優れた指導者でもある彼は、イタリアのイモラ国際ピアノアカデミーで教授を務めており、これまでイングリット・フリッターにフェデリコ・コッリといった国際的なピアニストを育て上げてきた。
今回の来日では、そんな彼の名演奏家・名教師としての実力を堪能できるリサイタルが二つ行われる。5月3日は、愛弟子である矢島愛子との共演で、モーツァルトやシューベルトなどのデュオ作品を演奏するとともに、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第15番「田園」とブラームスの「4つの小品」op.119をソロで披露。ドイツ・プログラムでペトルシャンスキーの音色の美しさと構築力を味わえる。
5月6日のソロ・リサイタルでは、シューマンの「ダヴィッド同盟舞曲集」にムソルグスキーの「展覧会の絵」と大曲が並ぶ。いずれも様々なキャラクターの小品が連続して奏でられ、演奏者の表現力と音色の幅広さ、そしてそれを実現する高い技術が求められる。ペトルシャンスキーの音楽性の豊かさを味わうのにこれほど最良の楽曲はないだろう。多彩なプログラムで、真のヴィルトゥオーゾと呼ぶにふさわしいピアニストの音色にぜひ耳を傾けてほしい。
文:長井進之介
(ぶらあぼ2024年4月号より)
ボリス・ペトルシャンスキー × 矢島愛子 デュオリサイタル
2024.5/3(金・祝)14:00 東京/烏山区民会館
ボリス・ペトルシャンスキー ピアノリサイタル
2024.5/6(月・休)14:00 ヤマハホール
問:アルペンミュージックオフィス03-5739-1663
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