カール=ハインツ・シュッツ(フルート)

ザンドナーイの作品の特別な雰囲気を味わってください

 ウィーン・フィルの首席フルート奏者、カール=ハインツ・シュッツが来年1月のN響オーチャード定期でザンドナーイの「フルートとオーケストラのための夜想曲」とモーツァルトのフルート協奏曲第2番を吹く。ザンドナーイは、オペラ《フランチェスカ・ダ・リミニ》などで知られる20世紀前半のイタリアの作曲家。
「ザンドナーイのこの曲は少し前まで忘れられていましたが、フルート奏者でウィーン国立音楽大学教授でもあるラファエル・レオネさんにその存在を教えてもらったのです。そして、昨年ヴュルツブルクで初めて演奏しました。ニールセンやライネッケもフルートと管弦楽のための作品を書いていますが、ザンドナーイの特別な雰囲気は群を抜いています。単一楽章のロマンティックな作品です。その色合いはまるで画家が描いたかのように素晴らしい。オーケストラにピアノ、チェレスタ、ハープも入り、聴き慣れない和音も現れますが、最後には素晴らしいメロディに戻ってきます。楽譜の最初にイタリア語の詩が掲げられ、この作品はその詩に基づいています」
モーツァルトのフルート協奏曲のうち今回は第2番をとりあげる。
「第1番も第2番も私の人生とともにありますが、第2番の方がザンドナーイの作品に合うと思って選びました。ウィーン・フィルは、ウィーン国立歌劇場でよくモーツァルトのオペラを演奏しているので、モーツァルトを吹くと家に帰ってきたかのように感じます。モーツァルトのフルート協奏曲にはオペラのエッセンスが表れているのです。今回、ソリストとして、ザンドナーイとモーツァルトという2つの違ったスタイルの作品を吹く機会をいただいて感謝しています」
オーストリアのインスブルックに生まれた彼は、エヴァ・アムスラーに師事した後、スイスで彼女の師であるオーレル・ニコレに学ぶ。その後、母国を離れて勉強したいとフランスに留学し、リヨン国立高等音楽院でフィリップ・ベルノルドに師事して、自分の音楽の境界を広げた。
「3人とも、フルートのヴィルトゥオーゾであると同時にヒューマニストでもあります。フルートだけでなく、音楽全般について学べたのは、幸運でした」
現在は、ウィーン・フィルのメンバーとして活動するだけでなく、ソリストとしても活躍し、後進の指導にもあたっている。この11月にはバレンボイム&ウィーン・フィルとブーレーズの「エクスプロザント・フィクス」を共演した。
ちなみに、多忙な日々の余暇の楽しみは、2人の娘(9歳と6歳)と1人の息子(3歳)とともに過ごすことだそうだ。
取材・文:山田治生
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年12月号から)

第82回 N響オーチャード定期
カレル・マーク・チチョン(指揮) NHK交響楽団
共演/カール=ハインツ・シュッツ(フルート)
2015.1/31(土)15:30 Bunkamuraオーチャードホール
問:Bunkamuraチケットセンター03-3477-9999
http://www.bunkamura.co.jp