世界のメジャーオーケストラから引く手あまたの名匠が登場
サカリ・オラモが魅力的なプログラムを引っさげて東京交響楽団の指揮台に立つ。
東響と初共演になるオラモは、シャープな天才肌。優秀な指揮者を数多く送り出すことでも知られるフィンランドを代表するマエストロの一人だ。サイモン・ラトルの後継者としてバーミンガム市響の音楽監督を務め、フィンランド放送響、ロイヤル・ストックホルム・フィルの首席指揮者を歴任、現在はBBC響の首席指揮者を務めている。
主要レパートリーとしてシベリウスやニールセン、エルガーなどのほかに、あまり演奏されないものの、魅力にあふれた作品を積極的に取り上げる。ルーズ・ランゴーの交響曲をベルリン・フィルと演奏したり、グラジナ・バツェヴィチなどの女性作曲家の管弦楽曲も精力的に録音している。ロイヤル・ストックホルム・フィルを率いて来日したときは、スウェーデン人女性作曲家ヘレーナ・ムンクテルの「砕ける波」をプログラムに載せていた。
今回のプログラムも、そんなオラモの持ち味が生かされている。北欧のレアな作品を並べつつ、最後は一転してスタンダード。ドヴォルザークの交響曲第8番を披露する。
最初は、ラウタヴァーラの代表作「カントゥス・アルクティクス」。この曲は、「鳥とオーケストラのための協奏曲」というサブ・タイトルをもつ。作曲家が録音した鳥の鳴き声をソリストにした協奏曲だ。鳥の声とオーケストラが響きを交わし、そして両者が一体となって、一斉に飛び立つ様子は鳥肌が立つほどの興奮をもたらすだろう。
2曲目は、昨年亡くなったサーリアホの「サーリコスキ歌曲集」(日本初演)。フィンランドの詩人サーリコスキによる、自然と人間との関わりが投影された詩による歌曲集だ。この曲も、ソプラノが鳥のような声で歌って開始される。歌手は、初演者でもあるアヌ・コムシ。超絶技巧と力強い声をもつフィンランドを代表する歌手だ。作曲家が目指したのは、声をオーケストラのなかに引き入れること。コムシの表現力があってこその音楽ともいえる。
シベリウスの「ルオンノタル」は、この作曲家の交響詩のなかでは、演奏される機会に恵まれない作品だ。というのも、ソプラノ独唱とオーケストラのための作品で、歌唱にはハイレベルのテクニックが要求されるから。コムシの幅広い声域がこの曲でも生かされるはずだ。そして、その歌詞はフィンランドの叙事詩『カレワラ』の冒頭、創世記的な内容で、鳥(カモメ)が重要な役割を果たす。つまり、これまでの3曲は、鳥を介しての自然と人間についての考察というテーマを共有しているということにもなる。
そして、最後はドヴォルザークの交響曲第8番。明晰に縁取られた響きのなかに、ユニークな感性をきらめかせるオラモの個性がより浮き彫りになるはず。強弱のコントラストも鮮やかに、キレキレのドヴォルザークを聴かせてくれるのではないか。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2024年4月号より)
第719回 定期演奏会
2024.4/20(土)18:00 サントリーホール
川崎定期演奏会 第95回
2024.4/21(日)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール
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