上岡敏之(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団

清澄かつ力強くひびく2つの“ハ長調”

左:上岡敏之 ©武藤 章
右:アンヌ・ケフェレック ©Caroline Doutre

 新日本フィルのマチネシリーズ「すみだクラシックへの扉」、その第21回の指揮者は前音楽監督の上岡敏之。フランスの名ピアニスト、アンヌ・ケフェレックを独奏に迎えてベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番、そしてシューベルトの大作、交響曲第8番「グレイト」が演奏される。

 ベートーヴェンとシューベルトは同時代のウィーンで活躍した作曲家であり、どちらの曲もハ長調で書かれている。それに加えて、ともに20代に書かれた作品という共通項を持つ。ただし、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番が初期の傑作であるのに対して、シューベルトの「グレイト」は最後に書きあげられた大作交響曲。作曲家のキャリアにおける位置づけという点で見れば、前者はスタート、後者はゴールという対照の妙がある。

 ベートーヴェンでソロを担うアンヌ・ケフェレックは、ラ・フォル・ジュルネ TOKYOなどで来日機会も多く、日本での人気も高い。フランス音楽はもちろんのこと、ウィーン古典派も中心的なレパートリーとしている。近年はベートーヴェンの後期三大ソナタ集をレコーディングして話題を呼んだ。その洗練されたピアニズムにより、若きベートーヴェンの姿を描き出す。

 上岡と新日本フィルはこれまでにシューベルトの交響曲を何度かとりあげてきたが、今回は待望の「グレイト」が実現する。慣習にとらわれることなく作品の核心に迫るマエストロならではの名演を期待できるのではないだろうか。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2024年3月号より)

すみだクラシックへの扉 第21回
2024.3/15(金)、3/16(土)各日14:00 すみだトリフォニーホール
問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 
https://www.njp.or.jp