アンドレア・バッティストーニ(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団

マエストロ渾身のタクトで表出する傑作のエネルギー

左より:アンドレア・バッティストーニ ©上野隆文/ヴィットリアーナ・デ・アミーチス ©Giada Sponzilli/彌勒忠史/ミケーレ・パッティ

 3月の東京フィル定期に登場するのは首席指揮者のアンドレア・バッティストーニ。これまでに数々の名演を東京フィルとくりひろげてきた俊英が、楽しみなプログラムを組んでくれた。曲はレスピーギの「リュートのための古風な舞曲とアリア」第2組曲と、オルフの世俗カンタータ「カルミナ・ブラーナ」。どちらも過去の遺産を20世紀にオリジナルな形でよみがえらせた作品で、いわば温故知新のプログラムといえるだろう。

 レスピーギはイタリア古楽復興とその再創造に情熱を傾けた作曲家。「リュートのための古風な舞曲とアリア」では16、17世紀の古いリュート曲をオーケストラ用に編曲している。古楽復興といっても20世紀前半の話なので、現代のように作曲当時のスタイルで再現するという発想はなく、レスピーギ流のオーケストレーションに妙味がある。弦楽合奏のための第3組曲が比較的有名だが、今回は管楽器も入った第2組曲。カラフルな響きが聴きものだ。

上段:新国立劇場合唱団 ©上野隆文
下段:世田谷ジュニア合唱団

 オルフの「カルミナ・ブラーナ」は中世の世俗詩集を大規模なカンタータに仕立てた傑作。詩の題材が酒や女、愛といったすこぶる世俗的なものだけに、音楽はまっすぐで力強く、人間の根源的なエネルギーを表現する。血沸き肉踊る音楽であり、どう考えてもバッティストーニにぴったりの曲なのだ。ヴィットリアーナ・デ・アミーチスのソプラノ、彌勒忠史のカウンターテナー、ミケーレ・パッティのバリトンに新国立劇場合唱団(合唱指揮:冨平恭平)と世田谷ジュニア合唱団(児童合唱指揮:掛江みどり)による万全の声楽陣が作品に命を吹き込む。名演の予感しかしない。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2024年3月号より)

第998回 オーチャード定期演奏会
3/10(日)15:00 Bunkamura オーチャードホール
第161回 東京オペラシティ定期シリーズ 
3/13(水)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
第999回 サントリー定期シリーズ 
3/15(金)19:00 サントリーホール
問:東京フィルチケットサービス03-5353-9522 

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