登竜門から飛び立った俊英たちの豊かな歌声を楽しむ
東京文化会館、読売新聞社、花王、東京都が主催する東京音楽コンクールは、近年、優れた演奏家を多数輩出している。特に歌手に関しては、「これは」と思う人が同コンクールの入賞者だったということが少なくない。そんな東京音楽コンクール入賞歌手を集めた「テノールの響宴」がこの3月に東京文化会館小ホールで、「シャイニング・シリーズ」の一環として開かれる。前回は2020年、コロナ禍での開催で、会場を小ホールから大ホールに移して席を空けて座るなど、出演者も観客も工夫を重ねていたことが思い出される。出演は前回に引き続き村上敏明(第3回・第3位)、与儀巧(第6回・第1位&聴衆賞)、小堀勇介(第16回・第2位)の3人に、新たに工藤和真(第17回・第2位(最高位)&聴衆賞)が加わる。
プログラムは前半がオペラ・アリア、後半がオペラの重唱や歌曲、ミュージカルのナンバーなど。発表されている曲目をみると、前半がプッチーニ《マノン・レスコー》、ロッシーニ《湖上の美人》、ヴェルディ《ルイザ・ミラー》、ポンキエッリ《ラ・ジョコンダ》となかなかに充実したラインナップ。どのアリアを誰が歌うのか…想像していると歌声が聴こえてきそうだ。後半もカンツォーネやバーンスタインの『ウエスト・サイド・ストーリー』などバラエティに富んでいる。ひと口にテノールといっても四者四様の歌声なのは前回で実証済み。今年も、それぞれに魅力的なテノールの響きを楽しみに上野に足を運びたい。
文:室田尚子
(ぶらあぼ2024年3月号より)
2024.3/2(土)15:00 東京文化会館(小)
問:東京文化会館チケットサービス03-5685-0650
https://www.t-bunka.jp