4月23日、元ソニー社長の大賀典雄氏が多臓器不全のため亡くなった。81歳だった。大賀氏は1930年、静岡県出身。東京芸術大学声楽科に在籍中に、電気・機械についての専門的知識と経営的な才覚を認められ、1959年に東京電信工業(現ソニー)に入社した。入社後は、ソニー製品の品質、機能、デザイン、宣伝の向上に努め、数々の高品質の製品を世界に送り出したが、とくにCDプレーヤーの開発と普及は彼の最大の功績に数えられる。さらに、MD、CD-ROM、DVDなどの光記録メディアの商品化に尽力した。また“ゲームビジネス”への参入も果たし成功させている。大賀氏はソニー(株)、CBSソニーレコード[現(株)ソニーミュージックエンタテインメント]の経営者として大きな足跡を残したが、日本における音楽文化への寄与という面でも重要な役割を果たした。1984年にソニー音楽芸術振興会の理事長に就任し「国際オーボエコンクール」や「齋藤秀雄メモリアル基金賞」を創設し、若手音楽家の育成にも力を入れたほか「0歳まえのコンサート」「子どもたちに贈るスペシャル・コンサートシリーズ」などで次世代の聴衆の育成にも尽力した。なお、演奏家としての大賀氏は1990年に還暦を迎えてから、指揮活動を本格的に開始し、99年からは会長も務めた東京フィルハーモニー交響楽団をはじめとして、イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団など世界有数のオーケストラを指揮したことも知られている。多くの著名演奏家との交流があったが、とくに大指揮者ヘルベルト・フォン・カラヤン(1908〜1989)が大賀氏に絶大な信頼を寄せていたことは有名。