7月25日、横浜みなとみらいホール第2代プロデューサーの反田恭平がオルガン演奏に挑戦する「オルガン道場」の初回レッスンが同ホールで行われた。国内外で活躍する演奏家を同ホールのプロデューサーに迎える「プロデューサー in レジデンス」の一環で、今年4月に就任した反田。彼のプロデュース企画もすでに始動している。
「オルガン道場」はそのうちの一つで、同ホールのシンボルであるパイプオルガン(愛称:ルーシー)の魅力を発信し、この楽器にさらに親しみを持ってもらうべく、反田自身がオルガン演奏に挑戦する企画。
レッスンは大ホール舞台正面に設置されている“ルーシー”を使って行われ、ホールオルガニストの近藤岳が指導にあたった。まず近藤が、鍵盤で弁の開閉をして、パイプに送り込む風をコントロールしながら発音するオルガンの仕組みや、4632本ものパイプをもつ巨大な構造のルーシーについて説明。その後、反田のリクエストによりブラームス「11のコラール前奏曲」より〈一輪のばらが咲いて〉のレッスンが行われた。
近藤を驚かせるほどの繊細なタッチをみせる反田だが、オルガンならではの両手両足を使った演奏技術には「難しい!」と思わず声をあげる場面も。
約1時間のレッスンでは、ブラームスの他に、オルガン特有の音色やタッチを体感した反田が「普段弾くことの少ないバッハが弾きたくなる」と言って演奏した「トッカータとフーガ 二短調」や、マーラーやチャイコフスキーなどの管弦楽曲のさわりも演奏した。
近藤はオルガンの音色について 「多種多様な音色を持つパイプの個性を理解した上で、それらを組み合わせて音色をつくる作業がすごく大事」と説明。反田が管弦楽曲の一節を弾いた際には、実際にストップレバーを操作し、音色作りをデモンストレーションした。
一方、反田は「ピアノは(ダンパー)ペダルがあるのでレガートで演奏しやすいが、オルガンは指の技術でレガートを表現しなければならず、とても難しい」とコメント。
レッスンを終えた反田は「オルガンの存在意義をひしひしと感じている。簡単そうに見えるオルガンがこんなに難しい楽器なのかと痛感したレッスンだった。プロの演奏家が新たに楽器を始めて本番を迎えるのはなかなかないこと。どこまで上手くなれるのか見届けてほしいし、オルガンのコンサートにも足を運んでほしい」と希望を語った。
今後は、数回のレッスンを経て、来年に予定されている反田のプロデュース企画「横浜みなとみらいホール25周年音楽祭」(2024.3/20~3/24)の公演で「11のコラール前奏曲」から何曲か演奏するのが当面の目標だという。
反田恭平が“ルーシー”からどのような音色を紡ぎ出すのか。横浜みなとみらいホールでの新たな挑戦に注目したい。
取材・文・写真:編集部
横浜みなとみらいホール25周年音楽祭
2024.3/20(水・祝)~3/24(日)横浜みなとみらいホール
問:横浜みなとみらいホール
https://yokohama-minatomiraihall.jp