1995年から沼尻竜典と活動を共にしてきたトウキョウ・ミタカ・フィルハーモニア(旧トウキョウ・モーツァルトプレイヤーズ)による2000年ライブ録音の初リリース。「密」なアンサンブルがじつに芳しい2大弦楽セレナードだ。それぞれの声部のあいだを狭め、しっとり溶け合う、柔らかな光を帯びた響き。チャイコフスキーは、滑らかにエピソードを繋いでいくが、終楽章の対位的な表現では立体感のある広がりで聴かせる。ドヴォルザークも活発な動きと、カンタービレを巧みに交代させながら、フィナーレまで溶々たる流れを作り出す。その音楽の運びの至妙なこと!
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2023年8月号より)
【information】
SACD『チャイコフスキー&ドヴォルザーク:弦楽セレナード/沼尻竜典&ミタカ・フィル』
チャイコフスキー:弦楽セレナード ハ長調/ドヴォルザーク:弦楽セレナード ホ長調
沼尻竜典(指揮)
トウキョウ・ミタカ・フィルハーモニア
収録:2000年9月、三鷹市芸術文化センター(ライブ)
オクタヴィア・レコード
OVCL-00815 ¥3850(税込)