N響コンサートマスターの伊藤亮太郎と名手・清水和音によるベートーヴェン・ソナタ・シリーズの第3弾。前2作同様、丁寧でこまやかな音楽作りがなされており、伊藤のナチュラルなフレージングに清水が生気や精彩を加えるといった、2人の絶妙なバランスが光っている。楽曲の特質も的確に表出。一音一音を大事にしながらじっくりと奏される第9番は、上昇期の意欲作であること、しなやかで軽みを湛えた第10番は、自在性に富んだ円熟期の佳品であることが明示される。各曲の本来のタイトル(ピアノとヴァイオリンのためのソナタ)を再認識させる、誠実で深い二重奏。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2023年7月号より)
【information】
SACD『ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第9番「クロイツェル」、第10番/伊藤亮太郎&清水和音』
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第9番「クロイツェル」、同第10番
伊藤亮太郎(ヴァイオリン)
清水和音(ピアノ)
オクタヴィア・レコード
OVCL-00814 ¥3850(税込)