ブルックナーという霊峰の頂を目指して
交響曲第5番。ミンコフスキと都響が、いよいよブルックナーの総本山へと足を踏み入れる。
彼らのブルックナー演奏は、2015年の交響曲第0番が最初だった。ロマン派から一歩抜け出そうとする音楽を誇張なく、みずみずしさを前面に出した快演に仕上げた。17年には、交響曲第3番を初稿版で取り上げる。エネルギッシュな推進力とともに、纏綿と歌う旋律、躍動するリズム。その新鮮なブルックナー像に、耳を開かされた気分になったものである。都響も機敏に反応、とりわけ細やかなフレージングが印象に残っている。
ミンコフスキといえば、ハイドンやベートーヴェン、あるいはフランスのバロック音楽をレパートリーの中心に置く指揮者だ。その彼がブルックナーを指揮するということ自体、驚きをもって迎えられた。しかし、そのフレッシュで、説得力をもった演奏に、ブルックナーという山脈を登るにあたって道は一つではないということを認識させられた人も少なくないのではないか。
ブルックナーの原石たる作品をギラギラと輝かせたミンコフスキが、ロマン派に主軸を置く指揮者なら真っ先に取り上げる第4番を飛ばし、第5番に挑む。この作曲家ならではの高みに昇るような構築性が要求される曲だけに、この指揮者がいかなる登攀ルートを辿るのか。そして、都響がそれにどう応えるか。聴き逃してはいけない演奏会だ。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2023年6月号より)
【ブルックナー生誕200年に向けて】
第977回 定期演奏会Cシリーズ
2023.6/25(日)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール
第978回 定期演奏会Bシリーズ
2023.6/26(月)19:00 サントリーホール
問:都響ガイド0570-056-057
https://www.tmso.or.jp