ゴールデンウィークに観たいクラシック無料動画特集!

 今年のゴールデンウィークは、ようやく音楽祭も賑わいを取り戻しそうですが、自宅でまったりと過ごしたいクラシック・ファンのために、編集部オススメの無料で観られる動画を集めました。
(コンテンツにより視聴期間が限られているものがありますので、ご注意ください)

ローマ歌劇場 ヴェルディ《アイーダ》

AIDA Verdi – Teatro dell’Opera di Roma

 ローマ歌劇場の今年初旬の公演からヴェルディ《アイーダ》。ダヴィデ・リヴァモア演出による新制作で、クラッシミラ・ストヤノヴァの歌うタイトルロールは必聴。新音楽監督、ミケーレ・マリオッティの鮮やかなタクトから放たれるオーケストラ・サウンドも切れ味抜群。EUの文化政策「クリエイティブ・ヨーロッパ」が支援するチャンネル「OperaVision」の配信で、アーティストの表情の変化を逃さないカメラワークにも注目。同歌劇場は今年来日公演を行うので、こちらも要チェック!
(収録:2023年1月31日)

スティーヴン・イッサーリス&コニー・シー
ラフマニノフ:チェロ・ソナタ 他

Concert de Steven Isserlis i Connie Shih

 “チェロの神様”パブロ・カザルスが今年、没後50年を迎える。カザルス財団(La Fundacio Pau Casals)は、毎年この偉大なチェリストに敬意を表するチェロ・コンサートを開催しているが、昨年の公演の動画がつい先日YouTubeに公開された。チェリストはスティーヴン・イッサーリス。独特な音色のガット弦による明晰な演奏で名を馳せる、現代最高のチェリストの一人だ。
 プログラムはサン=サーンスとベートーヴェン、ラフマニノフの3人の作曲家のソナタを柱に構成。アニバーサリー・イヤーで盛り上がりを見せているラフマニノフのソナタでは、ロマンティックな旋律を雄弁に歌い上げている。そして、ラフマニノフの前には、彼と同じタネーエフ門下で学んだスティーヴンの祖父、ユリウス・イッセルリス(イッサーリス)作曲の「チェロとピアノのためのバラード」が演奏される。カザルスに捧げられたこの小品が、スティーヴンとピアニストのコニー・シーとの親密な対話を通して抒情的に編み上げられていくのは、まさに至福のひととき。
(収録:2022年6月15日)

リオネル・ムニエ指揮 フライブルク・バロックオーケストラ&ヴォクス・ルミニス
J.S.バッハ:マタイ受難曲

Bach: Matthäus-Passion mit dem Freiburger Barockorchester

 ハンブルクのエルプフィルハーモニーで行われた、フライブルク・バロックオーケストラ(ドイツ)&ヴォクス・ルミニス(ベルギー)という豪華な顔合わせによるバッハ「マタイ受難曲」(指揮:リオネル・ムニエ)。エヴァンゲリストを務めるラファエル・ヘーンは、ヴォクスのメンバーでもあり、今年6月のライプツィヒ・バッハ音楽祭でもヨハネ受難曲のエヴァンゲリストを務める予定の注目のテノール。他にも、アルトのソロが、売り出し中のカウンターテナー、アレクサンダー・チャンス(あのマイケル・チャンスの息子)だったり、バスのアリア「来たれ甘き十字架よ」でガンバを弾くのが名手ヒレ・パールだったり、聴きどころがたくさん。
(収録:2023年4月5日)

イム・ユンチャン ピアノ・リサイタル at ウィグモアホール

Yunchan Lim piano – Live at Wigmore Hall

 昨年のヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールを史上最年少の18歳で制したイム・ユンチャンによるリサイタル。ルネサンス期イギリスのダウランド、来日リサイタルでも弾いたバッハの「シンフォニア」BWV787-801で開幕。後半はベートーヴェンからの2曲で、彼のクリアで美しい音を堪能できるプログラム。演奏中の表情は一貫して冷静で、躍動感あふれる音楽との対比が印象的。カーテンコールでのスタンディングオベーションからも会場の盛り上がりを感じ取ることができる。
(収録:2023年1月18日)

新国立劇場 ムソルグスキー《ボリス・ゴドゥノフ》

NEW NATIONAL THEATRE TOKYO Boris Godunov

 新国立劇場が開館25周年シーズンに初めて挑んだロシア・オペラの金字塔《ボリス・ゴドゥノフ》。大野和士芸術監督とマリウシュ・トレリンスキ(演出)がタッグを組み、1600年頃に実在したロシア皇帝ボリス・ゴドゥノフのひとりの人間としての孤独と葛藤を、大胆な読み替えに基づきドラマティックに描く。デジタル技術を活用した演出、斬新なデザインの小道具が印象的。デジタルアーカイブでは実際の劇場では気付きにくい細かな演出を見ることができる。
(収録:2022年11月17日)

クリスティアン・マチェラル指揮 ケルンWDR交響楽団
ブラームス:ピアノ四重奏曲第1番(シェーンベルク編・管弦楽版)

Brahms: Piano Quartet No.1 arr. Schoenberg | WDR Symphony Orchestra Cologne & Cristian Măcelaru

 ブラームスが遺したピアノと弦楽器の室内楽作品は、どれも押しも押されもせぬ傑作ぞろい。そのうちの一つ、若かりし頃の情熱をたたえながらも堅牢な構造でまとめられたピアノ四重奏曲第1番は、シェーンベルクによって管弦楽用に編曲されている。原曲の緻密な書法はそのままに、三管編成にタンバリンやシロフォンまで入った大オーケストラが華麗に操られており、色彩豊かにモダナイズされた魅力あふれる編曲だ。
 動画は、クリスティアン・マチェラル指揮のケルンWDR交響楽団による演奏。昨年のボン・ベートーヴェンフェストでの公演だ。近年着々と活躍の場を広げる若き俊英が、ドイツを代表するオーケストラとともに鮮やかな演奏を繰り広げる。この演奏を聴いた後に、ピアノ四重奏によるいぶし銀の原曲と聴き比べてみるのも面白いかもしれない。
(収録:2022年8月28日)

スティレ・アンティコ
バード:4声のミサ曲より アニュス・デイ

Stile Antico – Byrd: Mass for Four Voices – V. Agnus Dei

 今年は、イギリス・ルネサンス最大の作曲家ウィリアム・バード(c.1540-1623)の没後400年。バードの教会音楽といえば、英語の歌詞をもつ国教会の礼拝のための「グレイト・サーヴィス」も傑作だが、やはりラテン語によるミサ曲やモテットは彼の真骨頂。日本でも合唱界隈ではよく知られた「4声のミサ曲」を、若手主体の声楽アンサンブル「スティレ・アンティコ」の演奏で。イギリスのアカペラ・グループらしい透明感ある抜群のハーモニーと折り重なる旋律の絡みが美しい。

ラハフ・シャニ指揮 パリ管弦楽団
チャイコフスキー:交響曲第5番 他

Orchestre de Paris | Lahav Shani | Kirill Gerstein

 先日、2026年秋のミュンヘン・フィル首席指揮者就任が発表され、何かと話題のラハフ・シャニとパリ管弦楽団によるフィルハーモニー・ド・パリでの演奏会。ベートーヴェンのピアノ協奏曲のソリストは、藤田真央の現在の師としても知られるキリル・ゲルシュタイン。彼の持ち味であるタッチの繊細さとエネルギーが感じられ、オーケストラもベートーヴェンらしい輪郭がはっきりとした推進力のある演奏。なお、シャニはロッテルダム・フィルを率いて6月に来日、諏訪内晶子、藤田真央との共演が予定されている。
(収録:2022年12月14日)