沼尻竜典(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団

讃歌の力強い響きと、北欧の俊才が奏でるシベリウス

 この4月から佐渡裕が音楽監督に就任し、新体制のシーズンに入る新日本フィルハーモニー交響楽団。5月の定期に登壇するのは、びわ湖ホール芸術監督をはじめ、各地で特別な成果を挙げ続ける沼尻竜典。佐渡の信頼も厚い名匠で、新体制の定期で最初の客演指揮者となる。

 演奏会前半はシベリウスのヴァイオリン協奏曲。ソリストはスウェーデン出身、カール・ニールセン国際音楽コンクール第1位など、北欧の期待の新星として注目を集めるユーハン・ダーレネ。瑞々しく透明感も備えた美音をもつ、2000年生まれの俊英で、その本領を北欧の傑作で体験できるのは嬉しい。

 後半はメンデルスゾーンの交響曲第2番「讃歌」。3人の独唱、合唱とともに、聖書の言葉による神への讃歌を歌い上げる内容で、60分を超える大作ながら、精妙かつ晴れやかな音楽と胸を打つ旋律にあふれた壮麗な名作である。沼尻がすべてをまとめて雄大に構築してくれるだろうし、ソプラノ砂川涼子、メゾソプラノ山際きみ佳、テノール清水徹太郎、栗友会合唱団と新国立劇場合唱団という、豪華声楽陣の歌唱が響きわたるのが楽しみでならない。

 ところで、「讃歌」は演奏機会が多い曲とはいえないが、新日本フィルは2019年に上演しており、わずか4年での再演となる。しかも今年は複数楽団が本作を演奏する予定。偶然ではあろうが、この3年間の疫禍を乗り越えて、堂々と歌声を響かせられるようになる時期、実にふさわしく象徴的な作品である。新緑の季節の本公演、喜びの歌声に一層の感動がこもるはず。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2023年4月号より)

第649回 定期演奏会
〈トリフォニーホール・シリーズ〉

2023.5/13(土)14:00 すみだトリフォニーホール
〈サントリーホール・シリーズ〉
5/15(月)19:00 サントリーホール
問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 
https://www.njp.or.jp