梶川真歩(フルート)

2番奏者と特殊管が生み出す清新な音楽世界

(c)Makoto Kamiya

 ソロや室内楽でも活躍するNHK交響楽団フルート奏者・梶川真歩。彼女はこの6月、Hakuju Hallの「N響チェンバー・ソロイスツ」第5回に出演する。当シリーズは「N響メンバーが奏でる音楽を間近で味わっていただきたい」との思いで「将来を担う世代を中心に行っている」企画。今回は「木管2番奏者による特殊管の世界」と題した興味津々の内容だ。

 「普段は1番奏者に臨機応変に合わせたり、和音の内声を作ったりするなど細かな気配りをしている2番奏者が集まったアンサンブルと、2番奏者がソリスティックな役割を果たす特殊管をまとめて聴いていただき、色々な顔を持つ奏者の演奏に触れてほしいと思いました」

 出演者は、彼女のほか、池田昭子(オーボエ)、松本健司、山根孝司(以上クラリネット) 、佐藤由起(ファゴット) 、野見山和子(ホルン)の6名。「女性4名は、男性クラリネット奏者を交代で加えながら、アウトリーチ等で木管五重奏を披露してきた」メンバーでもある。

 プログラムの1つは特殊管が活躍する管弦楽曲。これらは通常の木管五重奏と共に演奏される。

 「ムソルグスキーの『展覧会の絵』の“ビドロ(牛車)”を野見山さんがワーグナーテューバで、ラヴェルの『マ・メール・ロワ』の“美女と野獣の対話”を佐藤さんがコントラファゴットで、ドヴォルザークの『新世界から』の第2楽章を池田さんがコールアングレで吹きます。特に後の2曲は2人がN響でも素晴らしいソロを聴かせている作品です」

 さらにレアな演目もある。

 「モーツァルトの『6つの二重奏曲』第1番を私のピッコロと松本さんのE♭(エス)クラリネットで演奏します。これはフルート2本の定番曲を超高音楽器2本で吹く前代未聞の試み。2番奏者から首席になった松本さんはE♭クラの名手ですので、楽しみにしています。さらには、以前、欧州の現代音楽グループで活動されていた山根さんがバスクラリネットでアペルギス作曲の現代曲、私がバロックフルートに似た幽玄な音を持つアルトフルートでバッハのパルティータを披露します。いずれも無伴奏曲で、両楽器のソロに触れる貴重な機会になると思います」

 最後はヤナーチェクの組曲「青春」。

 「木管五重奏にバスクラリネットを加えた珍しい編成の作品。民族色に溢れたとてもいい曲です。ただ編成的に通常のコンサートには入れにくいので、メンバーが揃った今回ぜひやりたいなと。それに完成度の高いオリジナル作品を全員で演奏して終わりたいと考えました」

 親密な小空間で他に類のない演目を堪能できる本公演。彼女も「クラシックに馴染みのない方もお楽しみいただけますし、マニアの方は普段と違う感覚を身近で味わえます」と語る万人注目の一夜だ。
取材・文:柴田克彦
(ぶらあぼ2023年4月号より)

〜N響メンバーによる室内楽シリーズ〜
N響チェンバー・ソロイスツ 第5回 木管2番奏者による特殊管の世界
2023.6/23(金)19:00 Hakuju Hall
問:Hakuju Hall チケットセンター03-5478-8700 
https://hakujuhall.jp