クシシュトフ・ウルバンスキ(指揮)

日本での公演は常にエキサイティングです

(c)Marco Borggreve

 インディアナポリス響の音楽監督等を務め、ベルリン・フィルをはじめ世界の一流楽団に客演を続けるポーランドの指揮者クシシュトフ・ウルバンスキが、東京交響楽団に再登場を果たす。2009年東響に初登場した彼は、13年から3年間首席客演指揮者を務め、以後もたびたび共演。今回は21年11月の「カルミナ・ブラーナ」の熱演から間を置かずしての登場となる。

 「東響とは長年にわたってお互いに信頼、尊敬、友情関係を築いてきました。彼らの演奏は最高水準です。楽員の皆さんはテクニックが完璧であると同時に、新しいアイディアやこれまでと異なる解釈に対しても非常に柔軟でオープンです。私はいつも彼らと演奏できることを嬉しく思っています」

選曲にも表れる東響との信頼

 今回は2つのプログラムを指揮する。

 「前回シマノフスキのヴァイオリン協奏曲を演奏し、楽員もお客様もとても楽しんでくださったので、最初の週は彼の代表作の一つ『スターバト・マーテル』を、プロコフィエフの『ロメオとジュリエット』組曲と組み合わせました。さらには、現代最高の作曲家の一人、コネッソンの音楽を披露できるのも嬉しいことです。2つ目のプロではドヴォルザークの交響曲『新世界より』を提案しました。この曲は私の日本デビュー時、東京交響楽団をはじめて指揮した時の作品。今回はその後も研究を重ね続けて生まれた新たな解釈をお伝えすることができます。それに、ショパンのピアノ協奏曲第2番(独奏はヤン・リシエツキ)、メンデルスゾーンの『真夏の夜の夢』序曲を組み合わせ、とても美しいプログラムに仕上がりました」

 「ロメオ〜」は彼独自の選曲&構成による13曲の組曲。コネッソンの「Heiterkeit」(日本初演)とシマノフスキの作品には、東響コーラスや実力派ソリストも出演する。

 「プロコフィエフの演奏会用組曲は物語の時系列に沿っていません。そこで私はシェイクスピアの悲劇の物語をそのまま伝えたいと考えました。またコネッソンは色彩的、ヴィルトゥオーゾ的な音楽を書く作曲家です。しかし今回演奏する『Heiterkeit』は、インディアナポリス響と共にベートーヴェン『第九』の序曲として委嘱したため、その楽器編成に収まるようあえて小型化された作品。音楽自体は、ヘルダーリンの詩の内容を強調した、とても感動的なものです。シマノフスキの方も素晴らしい音楽。初めて聴いたとき、最初の一音から私の心を捉え、数日間は頭から離れませんでした。彼の他の作品と比べるとシンプルですが、圧倒的な感動を呼び起こしてくれます」

名曲が生まれ変わる!?

 「新世界より」の「新たな解釈」も気になる。

 「東響との初共演時と今では、曲に対する考え方が大きく変わりました。この曲の人気はある種の“呪い”のようなものでもあり、演奏の習慣が幾重にも重なって、曲の核心を明らかにすることが非常に難しくなっています。そこで、楽譜を深く掘り下げ、初演に使われた下書きやオリジナルのパート譜を研究しました。すると、ドヴォルザークが当初イメージした音楽は、見事なオーケストレーション、透明かつ華麗でありながらシンプルな構造を持っていました。それを楽員や聴衆と分かち合いたいと思います」

 加えて自国の名作にも、「シマノフスキの作品と人気の高いショパンのピアノ協奏曲第2番をお届けしますが、ポーランドの素晴らしい音楽と向き合うと、いつも幸せな気持ちになります」と、格別な思いを寄せる。

 常に鮮烈な音楽を奏でるコンビの2プログラム。いずれも聴き逃せない。
取材・文:柴田克彦
(ぶらあぼ2023年4月号より)

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4/15(土)18:00 サントリーホール
川崎定期演奏会 第90回 
4/16(日)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール
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4/23(日)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
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