R.シュトラウスの「幻のオペラ」を上演〜東京二期会コンチェルタンテ・シリーズ《平和の日》

 東京二期会がBunkamuraとの共同主催により、映像と照明を駆使したセミ・ステージ形式で贈る〈東京二期会コンチェルタンテ・シリーズ 〉。オペラの楽曲そのものの魅力が堪能できるとともに、フル・ステージではなかなか上演機会に恵まれなかった演目も紹介されてきた。来たる4月8日、9日、シリーズ第5弾として、リヒャルト・シュトラウス《平和の日》が日本初演される。

 《平和の日》は、17世紀のドイツ三十年戦争終結の日を舞台にした物語。1936年に作曲され、38年にミュンヘンで世界初演された。そのフィナーレでは、長い戦争が終わり、平和が訪れた日の民衆の喜びが力強く表現され、平和への祈りと希望のメッセージが観る者の心を揺さぶる。しかし、時はナチス・ドイツの政権下で、初演翌年には第二次世界大戦が勃発する。皮肉なことに、戦時中ナチスによる「平和プロパガンダ」に利用された感もあるこのオペラは、戦後封印されたかのように上演の機会を失った。この作品が「幻のオペラ」と形容される所以だ。

第二次世界大戦開戦前夜に世界初演された平和への讃歌を
世界的名匠 準・メルクルが指揮!

準・メルクル (C)Tey Tat Keng

 しかし、今回の指揮、準・メルクルは《平和の日》について、「世界的な緊張が高まる今、初演の翌年に第二次世界大戦がはじまったこの作品の平和へのメッセージが、さらに深い意味を持つようになりました」と語っている。ドイツオペラの世界的スペシャリストとして、とりわけR. シュトラウスに定評のあるマエストロだが、その日本初演に並々ならぬ想いを抱いていることがうかがえる。東京二期会には、《イドメネオ》《ダナエの愛》《ローエングリン》に続いての登場となる。

日本のオペラ界のトップランナーたちが平和への祈りを歌い上げる

 東京二期会のキャストも、日本初演にふさわしい陣容が揃った。主役である包囲された街の司令官を務めるのは、清水勇磨と小森輝彦。清水勇磨は、《ばらの騎士》ファーニナル、《タンホイザー》ヴォルフラム、《パルジファル》アムフォルタスなどドイツオペラでも大役を果たしてきた充実のバリトン。日本人初のドイツ宮廷歌手・小森輝彦はドイツオペラの王道といえるキャリアを誇り、東京二期会でも《ダナエの愛》ユピテル、《ローエングリン》テルラムント、《フィデリオ》ドン・フェルナンドなどを好演してきた。

左より:清水勇磨、小森輝彦、中村真紀、渡邊仁美


 マリアには若きソプラノの逸材が揃って登場。中村真紀は2018年に《ローエングリン》オルトルートで二期会デビューを飾り、《タンホイザー》エリーザベトのカヴァーキャストを務めた後、今回の主役の座を獲得。渡邊仁美は《アルチーナ》題名役で二期会デビュー後、《サロメ》題名役のカヴァーを経て、22年2月《影のない女》皇后役に抜擢されるも、コロナ禍において公演が中止。今回満を持しての主演を果たす。

 ドイツオペラの世界的マエストロと日本のオペラのトップランナーたちが贈る平和への歓喜。今回を逃すと二度と聴けない貴重な機会となるかもしれない。

Information

《二期会創立70周年記念公演》
東京二期会コンチェルタンテ・シリーズ
《平和の日》(日本初演/セミ・ステージ形式上演)

2023.4/8(土)17:00、4/9(日)14:00
Bunkamuraオーチャードホール


指揮: 準・メルクル
管弦楽: 東京フィルハーモニー交響楽団

●出演
包囲された街の司令官:清水勇磨(4/8)小森輝彦(4/9)
マリア(その妻):中村真紀(4/8)渡邊仁美(4/9)
衛兵:北川辰彦(4/8)大塚博章(4/9)
狙撃兵:高野二郎(4/8)岸浪愛学(4/9)
砲兵:髙田智士(4/8)野村光洋(4/9)
マスケット銃兵:松井永太郎(4/8)髙崎翔平(4/9)
ラッパ手:倉本晋児(4/8)清水宏樹(4/9)
士官:石崎秀和(4/8)杉浦隆大(4/9)
前線の士官:的場正剛(4/8)岩田健志(4/9)
ピエモンテ人:前川健生(4/8)山本耕平(4/9)
ホルシュタイン人 (包囲軍司令官):河野鉄平(4/8)狩野賢一(4/9)
市長:伊藤達人(4/8)持齋寛匡(4/9)
司教:堺 裕馬(4/8)寺西一真(4/9)
女性の市民:石野真帆(4/8)中野亜維里(4/9)
合唱: 二期会合唱団

●料金
S10,000円 A9,000円 B6,000円 C4,000円 学生2,000円

問:二期会チケットセンター03-3796-1831
http://www.nikikai.net/
http://www.nikikai.net/lineup/friedenstag2023/