大野和士(指揮) 東京都交響楽団

リゲティ生誕100年スペシャルプログラムで炸裂する超絶パフォーマンス

 生誕100年を迎えたハンガリー出身のジェルジ・リゲティ(1923-2006)。現代作曲家としては人気の高い巨匠だけに、多くの記念公演が予定されるが、3月の都響公演は殊に特筆されるものになる。近現代作品を得意とする音楽監督の大野和士と屈指の技量をもつ都響が、演奏至難を極める「ヴァイオリン協奏曲」「マカーブルの秘密」を演奏する——それだけでも十分に注目だが、今回ばかりは、ソリストの破格のパフォーマンスがすべての話題を独占するに違いない。

 その2作品のソリストはパトリツィア・コパチンスカヤ。裸足でステージに現れ、別格の求心力で聴衆を独自の世界に引きずり込んでしまうヴァイオリニスト。しかも、今回は「声」のソロを、オーケストラまで演技が要求される超難曲「マカーブルの秘密」で聴かせる。信じ難いことだが、既に同曲でヴァイオリンを弾きながら歌う(叫ぶ!)離れ業まで実現している。とにかく必見、驚愕の時間になる。協奏曲はリゲティの特長が凝縮された傑作で、13年前に新日本フィルと同曲を披露した際には、何かが憑依したかのような姿で衝撃的な名演かつ怪演を展開、会場は異様な興奮状態に。両曲とも深化した“アーティスト”コパチンスカヤで体験できるのは僥倖。その姿を目に焼き付けたい。

 本公演はピアノ曲「虹」管弦楽版(アブラハムセン編)と、リゲティ同郷の先輩にあたるバルトークの傑作「中国の不思議な役人」全曲版が取り上げられるのも凄い。大野&都響の最高の成果を示す好演が期待できよう。痺れるような緊張と熱気、絶対に会場で体験するべし。
文:林昌英
(ぶらあぼ2023年3月号より)

【リゲティの秘密 ―生誕100年記念―】
第971回 定期演奏会Bシリーズ
 2023.3/27(月) 
都響スペシャル 3/28(火)
各日19:00 サントリーホール
問:都響ガイド0570-056-057 
https://www.tmso.or.jp