第12回 音楽大学フェスティバル・オーケストラ

得意の“ダンス・プロ”で音大生から情熱を引き出す

井上道義 (c)Yuriko Takagi

 恒例の首都圏9音大の選抜オーケストラ公演。指揮者の経験と知恵が若い世代に継承される貴重な場だ。2024年末での引退を表明している井上道義が振る。井上が真っ先に選んだのが「春の祭典」。そこに伊福部昭「シンフォニア・タプカーラ」とウィンナ・ワルツ「天体の音楽」を合わせた“ダンス・プロ”を組んだ。

 学生と向き合うために時間と労力を惜しみなく注ぎ込む井上の姿勢がうれしい。約1週間のリハーサルを初日から指導する。彼のパッションが学生たちの無限の可能性を引き出し、井上もまた、若いエネルギーの奔流にさらなる情熱を引き出されて、触れたらやけどするような沸騰する伊福部、血湧き肉躍るパワフルな春祭ができあがるはず。

 オケは総勢138人。管打楽器パートは、各大学関係者が一堂に会して割り振る。通称“ドラフト会議”。抽選で決めた選択順に希望のパートを確保してゆく。「春祭のファゴット1番!」「じゃあ、うちはタプカーラのティンパニ!」という具合。一巡したらまた抽選。くじ運による一喜一憂もあって盛り上がり、先生たちも案外楽しんでいるようだ。舞台スタッフやライブラリアンなども学生が担当し、プロ・スタッフの指導を受けながら“現場”を学んでゆく。これも得難い経験。

 公式Twitter(@ondaiorchefes)には準備の様子などさまざまな情報が発信されていて、現場の空気感も伝わってくる。明日を担う若い音楽家たちにエールを!
文:宮本明
(ぶらあぼ2023年3月号より)

2023.3/25(土)15:00 東京芸術劇場 コンサートホール
問:東京芸術劇場ボックスオフィス0570-010-296 
https://www.geigeki.jp
3/26(日)15:00 ミューザ川崎シンフォニーホール
問:ミューザ川崎シンフォニーホール044-520-0200 
https://www.kawasaki-sym-hall.jp