鈴木優人(指揮) 読売日本交響楽団

楽団創立60周年の委嘱新作を自らの指揮で世界初演

 読売日本交響楽団の3月の定期演奏会に鈴木優人が登場。まず、彼が書いた読響創立60周年記念委嘱作品を、自らの指揮で世界初演する。指揮者、鍵盤楽器奏者、作曲家、プロデューサーなど多彩に活躍する、マルチな才能を持つ彼がどんな作品を披露してくれるのか、楽しみである。

 また、いま最も活躍著しい作曲家の一人であるイェルク・ヴィトマン(1973年生まれ)のヴィオラ協奏曲が日本初演されるのも注目である。ヴィトマンのヴィオラ協奏曲は、この日独奏を務めるアントワーヌ・タメスティのために2015年に作曲された、28分ほどの作品で、ヴィオラらしい深々とした歌から超絶技巧まで、多彩な表現が繰り広げられる。ミュンヘン国際音楽コンクール優勝者でもあるタメスティは、いうまでもなく現代最高のヴィオラ奏者の一人である。鈴木とも親しく、二人でリサイタルをひらくほか、バッハのソナタ集のCD録音も残している。今回の現代作品での共演はかなりエキサイティングなものになるであろう。

 後半には、鈴木が読響と継続して取り上げているシューベルトの交響曲から第5番を指揮する。これまで、第4番「悲劇的」(20年11月)、第8番「グレイト」(21年10月)で目覚ましい演奏を残してきただけに、優美な第5番もかなり期待できる。鈴木は、20年から読響の指揮者/クリエイティヴ・パートナーを務めているが、まさに彼のクリエイティヴな才能が最大限に発揮される一夜となるであろう。
文:山田治生
(ぶらあぼ2023年3月号より)

第626回 定期演奏会 
2023.3/9(木)19:00 サントリーホール
問:読響チケットセンター0570-00-4390 
https://yomikyo.or.jp