ジョン・エルウィス(テノール) & 渡邊順生(フォルテピアノ) シューベルト 「白鳥の歌」

国際的名手が織り成す音色美

 伝統あるイギリス声楽界のみならず、全ヨーロッパを代表する名テノールとして君臨し続けているジョン・エルウィス。そして、わが国が生んだ歴史的鍵盤楽器の達人の1人であり、国際的な演奏活動を展開する渡邊順生。これまでにもシューマンのリートなどで秀演を重ねて来た名コンビが、今度はシューベルトの佳品「白鳥の歌」とベートーヴェンの歌曲集「遥かなる恋人に寄す」に対峙する。
 「白鳥の歌」は、シューベルトの死後に出版された遺作の歌曲集。今回は歌曲集の核を成している、ハインリヒ・ハイネの詩集「歌の本」中の「帰郷」に基づく6つの作品全てを含む全曲を披露する。歌詞への音楽のマッチングや作曲技法の面からも、夭折の作曲家が晩年に成し遂げた円熟の境地。一方の「遥かなる恋人に寄す」は、シューベルトも愛したという、ベートーヴェンのロマンティシズム溢れる佳品だ。
 シギスヴァルト・クイケンら古楽界の先駆者らと共演しての名演が特に目立つエルウィスだが、本人は「古楽もまた、イギリスの音楽文化の一部」と発言し、モダン楽器との共演にも積極的だ。そういった意味では、もはや楽壇全体をリードする存在。フォルテピアノを弾く渡邊も、自らアンサンブルを指揮して宗教声楽作品やオペラを上演、楽器学など学術分野でも業績を上げるなど、今や古楽界全体の牽引役に。そんな2人の名手によって、2人の大作曲家による歌曲から、まったく新たな魅力が紡ぎ出されるに違いない。
文:寺西 肇
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年10月号から)

10/18(土)15:00 横浜みなとみらいホール(小)
問:横浜みなとみらいホールチケットセンター045-682-2000 
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