“古典”にインスピレーションを得た20世紀の作曲家たち
神戸市室内管弦楽団の第156回定期演奏会は、2021年から同楽団の音楽監督を務める鈴木秀美の指揮で開催。東京特別演奏会も同じプログラムで実施される。今回、鈴木は指揮だけでなく、自らチェロを弾いての大活躍。しかもモーツァルト、プロコフィエフ、シュニトケと、18世紀音楽に加えて、類似するコンセプトを持つ20世紀に書かれた作品を組み合わせた刺激的なプログラムだ。
モーツァルト「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」で、あえて鈴木はチェロを奏でて弦楽合奏に加わる。同楽団が弦楽合奏団としてその歴史が始まり、また鈴木自身が設立当初のチェロのメンバーであったというルーツが感じられて意義深い。続いて同じモーツァルトの管楽合奏曲である「ナハトムジーク」で妙技を聴かせる。この楽団は18年に管楽器セクションが加わることで現在の名称になったのだ。
後半に置かれたシュニトケ「モーツァルト・ア・ラ・ハイドン」とプロコフィエフ「古典交響曲」には共通した創作への視点がある。1977年作曲の前者が「ハイドン風モーツァルト」という意味のパロディであり、1917年完成の後者が「ハイドンが現代に生きていたら書いたであろう音楽」だ。「20世紀の彼らが昔の音楽に触発されて生み出した」と鈴木は言うが、古典作品とあわせて、時代の様式や感覚が錯綜するこれらの音楽がどのように表現されるのか興味は尽きない。
文:小味渕彦之
(ぶらあぼ2023年2月号より)
第156回 定期演奏会「音の謎かけ」
2023.2/11(土・祝)15:00 神戸文化ホール
東京特別演奏会
2/13(月)19:00 紀尾井ホール
問:神戸市民文化振興財団078-361-7241
https://www.kobe-ensou.jp