ヴァレンティン・シルヴェストロフの夕べ リターンズ Vol.1

ロシアとウクライナ両国のアーティストが奏でる平和への祈り

 ロシアによるウクライナ侵攻から10ヵ月余りを経て、なお戦禍は収束の兆しをまったく見せない。このような世界の現状に、芸術が果たすべき役割とは? 東京をはじめとする日本国内の3都市で、「平和を愛するすべての人に 祈りが音楽になったのではない! 音楽こそが祈りだったのだ」をテーマとしたコンサートが開かれる。ロシアとウクライナの若き演奏家が恩讐を越えて共演し、ひとつの音楽を紡ぎ上げることから、この命題にひとつの答えを出す。

 ロシア出身のピアニスト、アンドレイ・ググニンは2019年にチャイコフスキー国際コンクールで特別賞を受賞、将来を嘱望された。しかし、ウクライナ侵攻が起こるや、すぐにSNSで反対を表明。ロシア政府から「不適切な芸術家」のリストに入れられ、国内での演奏活動が許されなくなり、やむなく国外へ。かたや、ウクライナのヴァイオリニスト、アレクセイ・セメネンコは、2015年にエリザベート王妃国際音楽コンクールで第2位を獲得した逸材。侵攻が始まった当時はキーウで、マスタークラスなどの準備中だったという。

 今回のステージは、ウクライナ現代音楽の巨匠、ヴァレンティン・シルヴェストロフの「バガテル」が軸に。この作曲家が愛するバッハの作品から「羊は安らかに草をはみ」や、20世紀ロシアのボルトキエヴィチ「10の前奏曲」op.33-8、メシアン「世の終わりのための四重奏曲」(vn & p版)などを配している。実はシルヴェストロフ自身もまた、侵攻を受けて、祖国を離れてベルリンへ。今回の演奏会に向けて、「すべてこれらの事が起こっていたその時、神よ、あなたは一体、どこにおいでになったのですか…」と痛切なメッセージを寄せている。
文:笹田和人
(ぶらあぼ2023年1月号より)

2023.2/10(金)18:45 東京オペラシティ コンサートホール
2/14(火)19:00 五反田文化センター 音楽ホール
2/18(土)14:00 広島市南区民文化センター ホール
※福知山公演あり
問:MCSヤング・アーティスツ mticket@mcsya.org 
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