沼尻竜典オペラセレクション ヴェルディ《リゴレット》

実力派が結集したすこぶる意欲的な公演

 びわ湖ホール芸術監督・沼尻竜典によるオペラセレクション第8弾は、ヴェルディ中期の名作《リゴレット》。ダブル・キャストのそれぞれに、実力本位のキャスティングを感じさせる納得の顔ぶれが揃った。これは2公演とも観てみたい! リゴレットを演じるのは堀内康雄と牧野正人という日本が誇る2人のプリモ・バリトン。主人公の醜さの裡に秘めたほとばしる父性愛の激しさを聴かせてくれよう。ジルダには、役そのままに清らかな声と容姿の幸田浩子、そして数年前の《魔笛》でのMETデビューも大きな話題となった森谷真理。森谷は海外を本拠にしているので今、日本で彼女を聴けるのは貴重だ。にっくき色男マントヴァ公爵には、福井敬とジョン・健・ヌッツォのエース・テノールが配され、輝かしい美声で気品あるナンパ師を演じる。他にも若手・中堅の実力者たちがずらりと並ぶ陣容からは、この作品の決定版を、という上演側の意気込みが伝わってこようというもの。
 演出は、演劇やミュージカルにも広く活躍の場を広げている田尾下哲。奇をてらわない正攻法が特徴のミヒャエル・ハンペのもとで学んだ彼もまた、師同様に安易な読み替えをよしとしないクリエイターだ。8月に行なわれた関連企画「プレトーク・マチネ」でも、沼尻とともに、ユゴーの原作やその背景となっている時代について徹底的に語ったというから、原作を読み込んだわかりやすい舞台の中に、しかし奥深く救いのないこの人間ドラマを展開してくれるはず。
文:宮本 明
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年10月号から)

10/11(土)14:00、10/12(日)14:00 びわ湖ホール
問:びわ湖ホールチケットセンター077-523-7136 
http://www.biwako-hall.or.jp