年の初めもトッパンらしい本格派プロで、日独名手たちの妙技に酔う
「ニューイヤーコンサート」といえばウィンナ・ワルツやポルカ、あるいは肩の凝らないポピュラー名曲などが並べられるのが一般的。色とりどりの料理を並べた「おせち料理」的な楽しみ方が前提になっている。しかしトッパンホールの「ニューイヤーコンサート」はまったくノリが違う。「新年だからこそガッツリと肉食しようぜ!」と言わんばかりに気合の入ったプログラムを毎年用意してくれる。
2023年の年明けに登場するのは、ユリアン・シュテッケルのチェロ、山根一仁のヴァイオリン、原ハーゼルシュタイナー麻理子のヴィオラ。コダーイの無伴奏チェロ・ソナタと、バッハ(シトコヴェツキ編)の「ゴルトベルク変奏曲」という本格派のプログラムが組まれた。
ドイツ出身のチェロ奏者、ユリアン・シュテッケルは2010年ARDミュンヘン国際音楽コンクール第1位など輝かしいコンクール歴を誇り、バイエルン放送交響楽団やパリ管弦楽団ほか、著名楽団との共演も多い実力者。レコーディング活動も旺盛で、バロックから20世紀作品まで幅広いレパートリーを誇る。そのシュテッケルの十八番がコダーイの無伴奏チェロ・ソナタ。高度な技巧によりチェロの表現の可能性を突きつめると同時に、内省的で叙情的な性格を持った傑作である。
バッハの「ゴルトベルク変奏曲」はシトコヴェツキ編曲による弦楽三重奏版での演奏だ。原曲は鍵盤楽器のための作品だが、弦楽三重奏版では各声部の絡み合いが一段と明瞭になり、原曲にはない歌謡性が浮き彫りになる。日独の名手共演を楽しみたい。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2023年1月号より)
2023.1/11(水)19:00 トッパンホール
問:トッパンホールチケットセンター03-5840-2222
https://www.toppanhall.com