言葉と結びついた歌の魅力を言葉に精通した歌手の名唱で
歌と言語はとても密接な関係にある。訳詞で歌われることも多いから忘れがちだが、歌のメロディは本来、特定の言語の語感や抑揚、リズムと深く結びついている。その言語らしく歌われたときに歌はいちばん輝き、聴き手の心に迫る。
だから、7つの言語で書かれた7ヵ国の歌を7人の歌手が歌うのは、とても贅沢だ。1人の歌手が各国語を歌い分けるのも聴き応えがあるが、それぞれの言語に精通した歌手が言葉の美しさを引き立てて歌うとなると、格別に魅力的だ。イタリア歴の長い彌勒忠史がイタリアのバロック歌曲を歌い、オーストリアで学んだ松島理紗がシュレーカーやウェーベルンを披露。中国出身のジョン ハオが母国の歌を歌い、日本語の美しさに定評がある関定子が山田耕筰や間宮芳生を——。
気づいたかもしれないが、各国を巡る旅は、17世紀初頭のバロックから20世紀の新ウィーン楽派まで、時代を巡る旅と重ねられている。2時間で味わえる範囲は、広く濃厚である。
文:香原斗志
(ぶらあぼ2022年12月号より)
2022.12/22(木)19:00 Hakuju Hall
問:ビーフラット・ミュージックプロデュース03-6908-8977
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