ジョナサン・ノット(指揮) 東京交響楽団

古典の新しい愉しみ方を紹介する協奏曲プログラム

 いつも刺激的なプログラムを用意してくれる音楽監督ジョナサン・ノットと東京交響楽団の名コンビ。10月の東京オペラシティシリーズ第129回では、ストラヴィンスキーの「ダンス・コンチェルタンテ」、シェーンベルクの「弦楽四重奏と管弦楽のための協奏曲」、モーツァルトの「2台のピアノのための協奏曲 変ホ長調」の3曲が並べられる。キーワードとなるのはコンチェルト、そして古典VS擬古典。

 モーツァルトの「2台のピアノのための協奏曲」では、坂本彩と坂本リサによる姉妹デュオ Piano duo Sakamotoがソリストを務める。第70回ARDミュンヘン国際音楽コンクールのピアノ・デュオ部門で第3位および聴衆賞を受賞した新鋭で、ドイツと日本を拠点にする。いつも一緒の「仲良し姉妹」という二人だが、多くの体験を共有する姉妹ならではの濃密な表現を披露してくれることだろう。

 ストラヴィンスキーとシェーンベルクの両作品は、20世紀における古典回帰の精神を反映し、バロック音楽的な発想をもとにしている。ストラヴィンスキー作品は合奏協奏曲風でウィットに富む。シェーンベルク作品では東響の小林壱成、服部亜矢子、武生直子、伊藤文嗣からなる弦楽四重奏がオーケストラと共演する。原曲はヘンデルの合奏協奏曲 op.6-7だが、シェーンベルクは単なる編曲を超えた再創造を施している。あたかもパラレルワールドからやってきたデラックス仕様のバロック音楽を聴くかのような新鮮さを楽しめるはずだ。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2022年10月号より)

東京オペラシティシリーズ 第129回
2022.10/9(日)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 
https://tokyosymphony.jp