山形交響楽団は8型対向配置で、弦はヴィブラート少な目で透明な響き、これにナチュラル・ブラス、バロック・ティンパニが加わる。このピリオド志向のオケから阪哲朗は実に生き生きとした豊かな音楽を引き出す。「田園」はキビキビと爽やかに前進する。緩徐楽章もしみじみとしてとても美しい。スケルツォはリズムの切れ味がよく、楽しげな雰囲気もいい。第4楽章「雷雨、嵐」は野性的なブラスが炸裂。終楽章では感謝の気持ちが自然に伝わってくる。第7番でもオケ全体が先鋭なリズムに乗って躍動する。とりわけフィナーレは、ライブの熱気も加わって、怖ろしいほどの頂点に到達する。名演だ。
文:横原千史
(ぶらあぼ2022年8月号より)
【information】
DVD『ベートーヴェン交響曲選集 2020年&2021年ライブ/阪哲朗&山響』
ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」、同第7番 イ長調
阪哲朗(指揮)
山形交響楽団
収録:2020年6月、やまぎん県民ホール(ライブ) 他
山形交響楽団
OVEP-00019 ¥2750(税込)