神奈川県民ホール開館50周年記念オペラシリーズ Vol.1 フィリップ・グラス/ ロバート・ウィルソン《浜辺のアインシュタイン》(新制作)

ダンス界の鬼才が演出、豪華キャストで贈る前衛オペラの傑作

 演出家ロバート・ウィルソンと組んだ《浜辺のアインシュタイン》(1976年初演)は、ミニマル・ミュージック第一世代の作曲家フィリップ・グラスの評価を確立した最初の大作である。

 このアメリカ発のオペラは何が新しかったのか? 彼らは明瞭なストーリーを用いず、物理学者アインシュタインの人柄や業績から連想されるものを、幕のタイトルや歌詞・台詞、作曲法の中にアイコンのように散りばめていった。これは起承転結というドラマ構造を持たないミニマリズムと、まさに相性の良い劇作法だった。列車の旅のように心地よいリズムに身を委ねながら、聴き手は音楽のみならず言葉や舞踊、ウィルソン独自の所作などを通じ、目前に展開されるものが次第に一つのイメージへと育っていくプロセスを体験する。

 首都圏のオペラ上演で重要な役割を担ってきた神奈川県民ホールが2025年の開館50周年を記念して手掛ける今回の上演は、本邦では30年ぶり二度目で、各界のトップランナーを結集した豪華キャストが早くも話題を呼んでいる。演出は東京オリンピックの開・閉会式で振付ディレクターを務めた振付家・ダンサーの平原慎太郎。音楽面で重要な役割を担うヴァイオリンには若き大器・辻彩奈、東京混声合唱団の常任を務めるキハラ良尚が指揮にあたる。日本語の上演となる台詞部分には松雪泰子、田中要次というテレビでもおなじみの俳優を起用し、Kバレエカンパニー名誉プリンシパルの中村祥子をはじめ実力派ダンサーが揃った。

 オペラ・シーンに新たな歴史を刻んだ名作が、21世紀の日本でどんなふうにバージョンアップされるのか。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2022年8月号より)

2022.10/8(土)、10/9(日)各日13:30 神奈川県民ホール
問:チケットかながわ0570-015-415 
https://www.kanagawa-arts.or.jp/tc/