発端はバッハのインヴェンションでの大発見
英国を中心に国際的な活動を展開し、高い評価を得てきた「フジタ・ピアノトリオ」。藤田めぐみ(ピアノ)、ほのか(チェロ)、ありさ(ヴァイオリン)の3姉妹によるトリオだが、現在はオランダ在住のありさが来日できないため、めぐみとほのかのデュオでの活動をメインに行っている。幼少期から重ねてきた二人のアンサンブルは圧倒的な世界観で人々を魅了しているが、近年は演奏だけでなくマスタークラスでも、その技と表現を多くの人々に伝えている。
ほのか「それぞれの楽器の演奏についてはもちろんですが、“互いの音”を聴くということを大切に指導を行っています」
めぐみ「私は普段個人レッスンを行っていないのですが、このマスタークラスでは、日々熟考を重ねて発見したことを受講生に伝えています。特に昨年末にはこれまでにない大発見があり、それをアドバイスしたところ、受講生の皆さんの演奏が大きく変わりました」
ほのか「これまでにも姉の様々な発見を聴かせてもらってきましたが、今回は特別なものだと思います。姉の演奏だけでなく、それを基にした指導で受講生の方々の演奏がまったく変わってしまったので」
それほどの“大発見”、具体的にはどのようなものなのだろうか。
めぐみ「きっかけは小林仁先生の講義でJ.S.バッハの『インヴェンション』について学んだ時でした。バッハ自身が“カンタービレ(歌うように)”で演奏するようにと指示していたことに気づき、いままで私の中でしっくりときていなかった呼吸(Breathing)の本来の在り方がわかり、それに加えて鼓動(Heartbeat)の重要性にも気がついたのです。この二つが揃うことで、演奏には血流(Blood flow)が生まれます。こうして、イメージした音が出るようになっただけでなく、演奏が自然と流れていくようになりました」
大発見のきっかけとなった「インヴェンション」から、「バッハ コネクション」と題された今回のリサイタルが生まれた。
ほのか「せっかく素晴らしい発見ができたので、その『インヴェンション』を軸にプログラミングしていこうと。私のリクエストでブゾーニ編の『シャコンヌ』も最後に入れてもらい、バッハで始まり、バッハへと立ち返るように、間には私と姉のデュオでバッハの旋律が引用されているベートーヴェンとブラームスのチェロ・ソナタを入れています」
“探求者”である藤田めぐみが見出した新たな音色と奏法が加わり、より美しく、豊かなアンサンブルとなった二人のデュオ。多くの感動と発見を聴衆に届けてくれることだろう。
取材・文:長井進之介
(ぶらあぼ2022年7月号より)
藤田ほのか & 藤田めぐみ チェロとピアノのリサイタル ~バッハ コネクション~
2022.7/23(土)16:00 京都/青山音楽記念館 バロックザール
9/8(木)19:00 東京文化会館(小)
問:ミリオンコンサート協会03-3501-5638(東京)
エラート音楽事務所075-751-0617(京都)
http://www.millionconcert.co.jp