野平一郎&脇園彩がENEOS音楽賞を受賞

 1971年に創設されたENEOS音楽賞。第52回の洋楽部門本賞に野平一郎(作曲家/ピアニスト/指揮者)、同奨励賞に脇園彩(メゾソプラノ)、邦楽部門には鶴澤津賀寿が選ばれた。この賞は、日本の音楽文化の発展・向上に大きく貢献した個人または団体をたたえる目的で創設されたもので、受賞者にはトロフィー、賞金200万円が贈呈される。

野平一郎 (c)YOKO SHIMAZAKI

 野平の多岐にわたる活動はよく知られているが、それぞれの分野で大きな成果を挙げ続けている。
 作曲家として多くの委嘱作品を手がけ、これまでに80曲以上を作曲。ピアニストとしては、古典から現代まで幅広いレパートリーを持ち、数多くの録音を残している。オーケストラとの共演や、新曲の初演も数多く行っている。近年は指揮者としても活躍の場を広げるほか、静岡音楽館AOIの芸術監督や東京文化会館の音楽監督として、ホール運営のみならず企画立案にまで力を注いでいる。
 後進の育成にも励み、東京藝術大学名誉教授、東京音楽大学教授を務めるかたわら、東京音楽コンクール、仙台国際コンクール ピアノ部門の審査委員長も務めた。第44回尾高賞、第35回サントリー音楽賞、2012年春に紫綬褒章など受賞多数。

脇園彩 (c)Ambra Iride Sechi

 1989年からは、本賞に加えて若手音楽家のための奨励賞が設けられている。
 脇園は、東京藝術大学、同大学院を経てパルマ・アッリーゴ・ボーイト国立音楽院、ミラノ・スカラ座研修所で研鑽を積み、2014年ペーザロにて、ロッシーニ・オペラ・フェスティバルでの《ランスへの旅》においてメリベーア侯爵夫人役に抜擢され、イタリアでのオペラデビューを果たす。2016年にはヴェローナのフィラルモーニコ劇場にてロッシーニ作曲《シンデレラ》タイトルロールでデビュー、好評を博し、数々のメディアで高い評価を得る。
 日本では2017年、藤原歌劇団《セビリアの理髪師》ロジーナ役でデビューして以来、昨年10月の新国立劇場での《チェネレントラ》アンジェリーナ役をはじめ、話題作に出演。その歌唱力に注目が集まっている。現在イタリアを中心に活動し、今後も活躍が期待される若手アーティストのひとりである。

脇園彩さんのコメント
 この度は、歴史と名誉あるENEOS音楽賞洋楽部門奨励賞の受賞者に選出頂き大変嬉しく、深い感謝の気持ちでいっぱいです。
 約2年超に及ぼうとするコロナ禍において、劇場芸術の業界もまた大きな困難の中に置かれました。恐らく世界中多くの人がそうであったように、愛する人々や世界の苦悶を目の前にどうすることも出来ない無力さと、ほとんどの行動が制限され自分の望み通りに生きることが出来ない苦しみを、一時期は絶望感をさえ伴って私も深く味わいました。
 しかし個人的には同時に、本当に望むことは何なのかを落ち着いてとことん自分に問うことの出来た時間でもあり、様々な苦しみを目の当たりにしたことで、より高い視点と共有の精神、そしてより強い共感力を授けて頂いた貴重な機会でもあったと思っています。
 この人生から何を望むのか自分の心に問い続けて返ってきた応えが、大きな愛と生きる歓びを、音楽や歌を通じて人々と共有することでした。
 今回の選出に繋がった機会の一つに2021年10月の新国立劇場<<チェネレントラ>>公演があったと確信していますが、まさにこの公演において、その真の望みをひとつ形に出来たことを自負しております。ですから今回の授賞はそれを認めて頂けた気がして、尚更嬉しく大変励まされるものでした。
 音楽の道はただでさえ厳しく、混乱の時代に入りさらに問題は増えていくだろうと言われています。ですがこの時期が私に与えてくれた、心から愛することを望み続ける真の強さと、そして何より歌や音楽が、いつも私をより良い方向へと導いてくれるであろうことを感じていて、恐れはありません。
 私をこの賞へと繋げて下さった全ての方々お一人お一人に心より深く感謝致しますと共に、受賞を通じて皆さまから頂くお力とお気持ちを、更に大きな形で世界に還元することが出来るよう今後ともますます精進いたします。
 この度は本当にありがとうございます!

愛を込めて。
脇園彩

ENEOS音楽賞
https://www.hd.eneos.co.jp/csr/child_reward/