アラン・ギルバート(指揮) 東京都交響楽団

世界的ジャズ・ピアニストが遺した最後の大作を日本初演

 ジャズ界の巨匠チック・コリアは、クラシック界でも異色の存在感を放ってきた。“巨星堕つ”の報が届いたのは昨年2月のこと。世を去る前にコリアが残した最後の大作は、没後半年を経て日の目を見ることとなる。

 その作品、「トロンボーン協奏曲」は、ニューヨーク・フィル首席奏者のジョセフ・アレッシが、ニューヨーカーでありニューヨーク・フィルの音楽監督も務めたアラン・ギルバートと、小曽根真のセッションを聴きにいったことがきっかけで生まれた。そこでコリアの曲が取り上げられ、感銘を受けたアレッシが小曽根経由で新曲を依頼したのだ。ジャズはもちろんのこと、いろいろな音楽のエッセンスを散りばめつつ、トロンボーンがオケと語り合う。“そぞろ歩き”を意味する「ア・ストロール」というタイトル通り、ムーディーで賑やか、肩の凝らない音楽だ。

 今回の「チック・コリアに捧ぐ」では、協奏曲誕生のきっかけを作ったアレッシが、ギルバートとそろい踏みで、この話題作を早くも日本の聴衆にお披露目してくれるが、他のプログラムもラテン系の血を持つコリアへのオマージュとなっている。ガーシュウィンの「キューバ序曲」で幕を開け、協奏曲で盛り上げた後、後半はラヴェル「スペイン狂詩曲」「ボレロ」へとつなぐ。

 首席客演指揮者でもあるギルバートが振る時の都響は、サウンドに弾力と勢いが加わり、滅法ノリがいい。プログラミングからして、会場の熱狂ぶりが目に浮かぶようだ。夏真っ盛り。暑さにバテ気味な方は、音のビタミンをたっぷり摂取してほしい。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2022年6月号より)

都響スペシャル「チック・コリアに捧ぐ」
2022.7/17(日)、7/18(月・祝)各日14:00 サントリーホール
問:都響ガイド0570-056-057 
https://www.tmso.or.jp