山響50周年「さくらんぼコンサート2022」、6月に東京と大阪で
2022年4月に創立50周年、第300回定期演奏会の節目を祝った山形交響楽団。今年も山形県名産サクランボの季節に東京(6/22、東京オペラシティコンサートホール)と大阪(6/23、ザ・シンフォニーホール)を訪れ、「さくらんぼコンサート2022」を開催する。ともに開演は午後7時だが、開場は1時間前と早めに設定され、山形の特産物を販売するほか、サクランボのお土産が当たる抽選も用意されている。
指揮は京都市出身ながら両親が山形県出身、山響とは2000年以来共演を重ね、2019年から常任指揮者を務める阪哲朗。ヴァイオリンのソリストには神尾真由子を迎える。
プログラムは6月18&19日に本拠地の山形テルサで行う第301回定期演奏会と同じ。山形で活躍する作曲家、木島由美子への山響創立50周年記念委嘱作品と神尾独奏のラロ「スペイン交響曲」、バルトークの「管弦楽のための協奏曲」と、エスニックなテイストの作品が並ぶ。
2003年以来すでに3曲の管弦楽作品を山響が初演している木島は福島県相馬市出身。山形大学教育学部特別教科(音楽)教員養成課程を卒業後、最初は音楽教師の道を歩んだ。「息子が7歳、娘が3歳」だった2000年に作曲家を目指し、対位法と管弦楽法を藤原義久に師事、和声法を独学で修めた。2020年には「ピアノ組曲『いのちの詩』」の中の1曲「桃花水」が「舘野泉 左手のピアノ・シリーズ『左手のためのピアノ珠玉集 時のはざま』」(音楽之友社)に収められるなど、急速に注目されはじめた作曲家だ。
神尾真由子を一躍有名にしたのは2007年のチャイコフスキー国際コンクールのヴァイオリン部門優勝だが、日本国内では小学4年生だった1996年に全日本学生音楽コンクール小学校の部で第1位を得て以来の注目株だった。翌年3月に東京のBunkamura オーチャードホールでシャルル・デュトワ指揮により、ソリスト・デビューした思い出の曲こそ「スペイン交響曲」(第5楽章のみ)だった。ラロはフランス人だが、スペイン出身の名ヴァイオリニストで「ツィゴイネルワイゼン」の作曲者でもあるサラサーテのために作曲するのに際し、スペイン風の味わいを随所に取り入れた。チャイコフスキーが「ヴァイオリン協奏曲」を書く時、この曲を徹底的に研究した史実もあり神尾には縁の深い作品。四半世紀にわたって弾いてきた蓄積を堪能できそうだ。
阪哲朗はウィーンに学び、ドイツ語圏の歌劇場でカペルマイスター(楽長)の経験を積んだマエストロだけに、旧ハプスブルク帝国文化圏の中欧(ミドルヨーロッパ)音楽も得意とする。バルトークもオーストリア=ハンガリー帝国時代の1881年に生まれたハンガリーの作曲家で、民族的な語法を独自に摂取しつつ近現代の輝きに満ちた独自の響きを究めた。米国亡命後、白血病で亡くなる寸前まで改訂に取り組んだ「管弦楽のための協奏曲」には無数のニュアンスが散りばめられている。オーケストラの楽員それぞれが鮮やかなソロを披露するように書かれた「協奏曲」だけに、阪の下で演奏能力を一段と高めつつある山響の「今」を知るのに最も適した選曲といえる。
文:池田卓夫
(ぶらあぼ2022年6月号より)
さくらんぼコンサート2022
東京公演
2022.6/22(水)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
大阪公演
2022.6/23(木)19:00 ザ・シンフォニーホール
問:山響チケットサービス023-616-6607
https://www.yamakyo.or.jp