『ぶらあぼ』誌面でご好評いただいている海外公演情報を「ぶらあぼONLINE」でもご紹介します。海外にはなかなか出かけられない日々が続きますが、“妄想トラベル”を楽しみましょう!
[以下、ぶらあぼ2022年5月号海外公演情報ページ掲載の情報です]
曽雌裕一 編
【ご注意】
新型コロナウイルスに加え、ロシアを巡る深刻な世界情勢のため、「夏の音楽祭」を含む各劇場の開催内容・出演者に今後変更の生じる可能性があります。最新情報は、各劇場等のウェブサイトで必ずご確認下さい。
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【8月の注目公演】(通常公演分)
2022/23シーズンの公演予定はまだあまり発表されていないが、その中で、ケルンのフィルハーモニーでは、ロト指揮レ・シエクルによるラモーの「ダフニスとエグレ」にラヴェルの「ダフニスとクロエ」を組み合わせた粋な選曲、またストラヴィンスキーの三大バレエ曲を一晩で行う演奏会(この一晩3曲プロはラトルが好んでやっていたのを思い出す)が予定されていて、大いに存在感を発揮する。
【夏の音楽祭】(8月分)
〔Ⅰ〕オーストリア
「ザルツブルク音楽祭」では、昨年の本欄でもご案内したとおり、特にオペラを演奏するウィーン・フィルの合奏力・表現力が、ウィーンでの通常公演時と比べて一段とレベル・アップするケースによく遭遇する。その意味では、フルシャ指揮のヤナーチェク「カーチャ・カバノヴァ」あたりはウィーン・フィルの十八番でもあるし、このオーケストラの独壇場となること間違いなし。歌手では、グリゴリアンの歌うプッチーニ「修道女アンジェリカ」に涙し、バルトリの歌う「セビリアの理髪師」で大いに笑う(これはウィーン・フィルではないが)などなど、楽しめる要素も満載。ただ、今年はR.シュトラウスの作品と現代オペラが見当たらないことが多少残念だ。オーケストラでは、サロネン=ウィーン・フィルのメシアン「トゥーランガリラ交響曲」、同じくウィーン・フィルをムーティが振るチャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」、ガランチャ、ジョヴァノヴィチ、フォッレと歌手を揃えたサン=サーンス「サムソンとデリラ」、ワーグナー「パルジファル」のそれぞれ第2幕(バレンボイム指揮)、ペトレンコ=ベルリン・フィルのマーラーの交響曲第7番とショスタコーヴィチの交響曲第10番、レージネヴァ出演のモーツァルト・マチネーなどどれも面白そう。室内楽にもゲルハーヘル、ゲルネ、キーシン、ソコロフ、カウフマン、ファウスト、ヴォロドス、コパチンスカヤ、カプソン、ポリーニ、レヴィット、フローレス等々、さすがにザルツならではの豪華な出演陣が並ぶ。
古楽音楽祭の定番「インスブルック古楽音楽祭」は相変わらず内容充実。グラウン、パッラヴィチーノやボノンチーニによる舞台作品の他、新進・ベテラン取り混ぜて旬の古楽団体が連日登場する。「シューベルティアーデ」は室内楽中心の音楽祭として魅力横溢。「グラーフェネック音楽祭」では、ロンドン響音楽監督最後のシーズンとしてラトルがマーラーの「復活」を演奏する。カウフマン、カンペ、シュトルックマン、ランツハマーと歌手を揃えたベートーヴェン「フィデリオ」にも要注目。
〔Ⅱ〕ドイツ
今年の「バイロイト音楽祭」、コルネリウス・マイスター指揮、シュヴァプ演出の「トリスタンとイゾルデ」プレミエで開幕することは先月号に記述したが、それに続けて、2年延期されたインキネン指揮、シュヴァルツ演出の「リング」がいよいよお披露目となる。インキネンの指揮やルンドグレンのヴォータンの評価にも興味は尽きないが、各演目の主要キャストにフォークト、ダヴィドセン、シャーガー、グールドなど実績のある人気歌手を並べ、大崩れは回避しようとの狙いもうかがえる。昨年、演出がさんざんな悪評に見舞われた「さまよえるオランダ人」は、指揮のオクサーナ・リーニフがウクライナ出身のため、今年は少なくとも指揮者には万雷の拍手が贈られるに違いない。ティーレマン指揮の「ローエングリン」は、定番フォークトの出演で、まずは安定の出来映えか。そのフォークトをソリストとしたネルソンス指揮のオーケストラ演奏会も予定されている。
「シュレスヴィヒ・ホルシュタイン音楽祭」では、ヘンゲルブロック指揮バルタザール=ノイマン=アンサンブル&合唱団のブラームス「ドイツ・レクイエム」その他の声楽曲が楽しみ。五嶋みどりがフレンスブルクでの演奏会に出演するが、この音楽祭への登場は珍しい。
その他「ラインガウ音楽祭」ではリシエツキのピアノ弾き振りのショパンの協奏曲、「メクレンブルク=フォアポンメルン音楽祭」ではヴァイオリンのチェクナヴォリアンの大活躍とそれぞれ注目点もあるが、例年好企画の並ぶ「ブレーメン音楽祭」、「ボン・ベートーヴェン音楽祭」、「ルール・トリエンナーレ」、「ルール・ピアノ・フェスティバル」といった音楽祭の詳細が未発表というのは大変残念だ。
〔Ⅲ〕スイス
スイス随一の夏の定番イベントである「ルツェルン音楽祭」。今年もハーディング、シャイー、バレンボイム、フルシャ、パッパーノ、ヘレヴェッヘ、ペトレンコなどの有名人気指揮者が勢揃い。イヴァン・フィッシャー指揮ブダペスト祝祭管が演奏するワーグナーの「ワルキューレ」第1幕は、ニールンド、フォークト、グロイスベックが歌手として出演する豪華版。「グシュタード・メニューイン・フェスティバル」は、ピアノのシフとバリトンのホルの共演、ソコロフのピアノ、「グラーフェネック音楽祭」の稿でも紹介したベートーヴェン「フィデリオ」、コパチンスカヤのヴァイオリン、ルセ指揮レ・タラン・リリクのモーツァルト「魔笛」など、8月も壮観のラインナップ。
〔Ⅳ〕イタリア
「ペーザロ・ロッシーニ・フェスティバル」の目玉でもあるロッシーニのオペラ、今年も「オリー伯爵」、「新聞」、「オテロ」、と他ではそうそう聴く機会のない佳品をチョイス。「演出家ピエール・ルイージ・ピッツィ音楽祭40周年記念」と銘打ったガラ・コンサートにはメゾソプラノの脇園彩も出演する。「マルティナ・フランカ音楽祭」はカンポグランデ、ペドローロなど今年もレア度の高い作曲家の作品を上演。先月号までに紹介できなかった「ラヴェンナ音楽祭」、「マチェラータ・オペラ・フェスティバル」も遡及掲載した。
〔Ⅴ〕フランス
〔Ⅵ〕ベネルクス
古楽系随一の夏の音楽祭「ボーヌ・バロック音楽祭」の詳細が発表されたので、その内容を記述した。さすがにマクリーシュ、ルセ、クリスティ、ローレル、アレッサンドリーニ、フュジェ、スピノジ、ダントーネなどの有名古楽系指揮者が名を連ねる。同じ古楽系のベルギーの「フランドル古楽祭(AMUZ)」は、延期となった一昨年のプログラムを改めて上演。ただし、フランスの「サブレ音楽祭」やオランダの「ユトレヒト古楽祭」などの高名な古楽音楽祭の詳細が未発表なのは残念。なお、アムステルダムで行われる「フリーデンロテレイ・サマーコンサーツ」では、マケラとヘレヴェッヘ指揮によるコンセルトヘボウ管が、実質的にここで新シーズンの幕を開ける。
〔Ⅶ〕イギリス
〔Ⅷ〕北欧
イギリスでは「プロムス」の公演内容は未発表ながら「エディンバラ国際フェスティバル」の全容は発表済み。特に期間後半では、ロト指揮レ・シエクル、サヴァール指揮エスペリオンXXI、ラトル指揮ロンドン響、ビシュコフ指揮チェコ・フィル、ネゼ=セガン指揮フィラデルフィア管等々、人気アーティストが勢揃い。ネゼ=セガン自身がピアノを弾いてフィラデルフィア管のメンバーと共演する室内アンサンブルもある。「グラインドボーン・オペラ・フェスティバル」の8月公演では、ドゥストラックの出演するプーランク「人間の声」が面白い。その他「グラインドボーン」と趣を同じくする「カントリーハウス・オペラ・フェスティバル」の一つ「ロングボロー・フェスティバル・オペラ」は、6月に遡ると、ワーグナー「ジークフリート」やコルンゴルト「死の都」など強靱なテノールを必要とする演目が並ぶ。ちなみにワーグナーはこの先2024年に「リング」のツィクルス公演が予定されている。
スウェーデン「ドロットニングホルム・オペラ・フェスティバル」の今年のメインはヴィヴァルディの「ジュスティーノ」(ペトルー指揮)。なお、ルーマニアの「ジョルジェ・エネスク・フェスティバル」は「音楽祭」と「コンクール」の隔年開催で、今年はコンクールのみのため掲載は省略。
(曽雌裕一・そしひろかず)
(コメントできなかった注目公演も多いので本文の◎印をご参照下さい)