
『ぶらあぼ』誌面でご好評いただいている海外公演情報を「ぶらあぼONLINE」でもご紹介します。
[以下、ぶらあぼ2025年3月号海外公演情報ページ掲載の情報です]
曽雌裕一 編
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6月は、5月に続いて音楽祭企画が目白押しだが、それと並んで、特定の音楽家のメモリアルイヤーを追想する演奏会も目立つ。ショスタコーヴィチ没後50年を記念したライプツィヒでのフェスティバルは先月号でご紹介したとおりだが、2025年は現代作曲界に巨大な足跡を残したピエール・ブーレーズの生誕100年でもあるため、彼に関わる演奏会も各地で繰り広げられている。特に6月は、この人物の名を冠したベルリンの「ピエール・ブーレーズ・ザール」で興味を引く演奏会が続くため、この会場の演奏予定を一部掲載した。6月20日と21日はブーレーズと同じく作曲家としても指揮者としても活躍するジョージ・ベンジャミンがブーレーズを取り上げ、中でも21日はピエール=ローラン・エマールとピアノで共演するというのが大変興味深い。なお、エマールは、バーデン=バーデン聖霊降臨祭音楽祭でも単独でブーレーズを演奏するほか、ケルンのフィルハーモニーでアンサンブル・ムジークファブリークと共演したり、ルール・ピアノ・フェスティバルでタマラ・ステファノヴィチとの師弟共演や、ヴァイオリンのアレーナ・バエワ等とのアンサンブルでメシアンの「世の終わりのための四重奏曲」を演奏するなど活発な活動を行っている。
ブーレーズについては、ハンブルク国際音楽祭で、ラトル=バイエルン放送響やパッパーノ=ロンドン響なども演奏するが、さらに驚きなのは、セクハラ問題で活動から遠ざかっている指揮者のフランソワ=グザヴィエ・ロトが、SWR響やレ・シエクルでブーレーズの作品を振って表舞台に戻ってくる(予定である)ことである。「バーデン=バーデン聖霊降臨祭音楽祭」は事実上ブーレーズ・フェスティバルとも言える内容だが、ここでのロトの復活は期待を抱かせる。もう一つ、1866年生まれなので現代作曲家とは言えないが、フェルッチョ・ブゾーニの約80分に及ぶ長大なピアノ協奏曲が、バイエルン放送響でサロネンの指揮、イゴール・レヴィットのピアノにより演奏されるのも6月の要注目公演と言えよう。
音楽祭関係では、「ザルツブルク聖霊降臨祭音楽祭」でのヴィヴァルディ「ホテル・メタモルフォシス」(バルトリ出演)、「ライプツィヒ・バッハ音楽祭」へのガーディナー率いる新アンサンブル(かつての手兵モンテヴェルディ合唱団・管弦楽団とトラブルを起こして指揮者を解任された直後に新編成)の登場、「ハレ・ヘンデル音楽祭」のヘンデル作品、「ミュンヘン・オペラ・フェスティバル」のモーツァルト「ドン・ジョヴァンニ」プレミエ、「モーツァルトフェスト(ヴュルツブルク)」の各公演、「フィレンツェ五月音楽祭」でのメータ指揮のヴェルディ「アイーダ」等々。他にオペラ関係では、ウィーン国立歌劇場のR.シュトラウス「ばらの騎士」やチャイコフスキー「スペードの女王」、アン・デア・ウィーン劇場のリュリ「プロセルピーヌ」、ミラノ・スカラ座のワーグナー「ジークフリート」、ベッリーニ「ノルマ」、シャンゼリゼ劇場のR.シュトラウス「ばらの騎士」なども面白そうだが、列挙しきれないので本文の◎印をご参照いただきたい。なお、現代物オペラも花盛りで、ケルン歌劇場のマヌリ「人類最後の日」、フランクフルト歌劇場のライマン「メルジーネ」を始めとして、ベルリン州立歌劇場のフォクルール「カッサンドラ」、シュトゥットガルト歌劇場のバッティ「赤いクジラ」、アン・デア・ウィーン劇場のスルンカ「ヴォイス・キラー」なども要注目。
そして何より、ベルリン・フィルに山田和樹が登場するというのがオーケストラでは最大の話題だろうか。もちろん、ウェルザー=メストがウィーン・フィルを振るマーラー「大地の歌」、ティーレマン=シュターツカペレ・ベルリンのブルックナー交響曲第6番(ムジークフェライン)、ブロムシュテット指揮NDRエルプフィルのバッハのカンタータなど、ベテラン・巨匠陣の活躍も見逃せない。
(曽雌裕一・そしひろかず)
(コメントできなかった注目公演も多いので本文の◎印をご参照下さい)