〜N響メンバーによる室内楽シリーズ〜 N響チェンバー・ソロイスツ 第3回 クリスティアン・バッハとモーツァルト

渋谷のスーパーアンサンブルが聴かせる古典派の精髄

 NHK交響楽団メンバーがHakuju Hallで室内楽を聴かせる「N響チェンバー・ソロイスツ」。スタートは2021年ながら、11月の第2回ではなんとマーラーの交響曲第10番全5楽章(カステレッティ版)に挑戦。しかも恐ろしく高精度、高水準の名演をやってのけた。“指揮者なしでも上手”という次元をはるかに超えた世界基準の演奏に、会場も大変な盛り上がりだった。

 4月開催の第3回は、一転して古典派作品に取り組む。前半は大バッハの末子、1735年生まれのヨハン・クリスティアン・バッハ。実演機会は稀少な作曲家だけに、古典派前期の様式と旋律美をもつ佳品3曲を楽しめる好機となる。交響曲op.3-1に続き、典雅な協奏交響曲ヘ長調ではN響の誇るダブルリードの名手たち、オーボエ池田昭子とファゴット宇賀神広宣がソロを務める。そして、21年10月に首席ヴィオラ奏者に就任したばかりの村上淳一郎が、クリスティアン・バッハの名品、ヴィオラ協奏曲ハ短調を弾くことも注目。ケルン放送響で10年以上首席を務め、ソロの濃密な音色、熱い演奏姿など、まさに世界基準を体現する存在だ。

 後半はモーツァルトのディヴェルティメント第15番 K.287。愉悦感あふれる楽想、気の利いたハーモニー、感動的な緩徐楽章など、作曲者の魅力が詰まった傑作。第1ヴァイオリンの超絶技巧が際立つ楽曲としても知られるが、前回のマーラーでも最高のリードで卓越した演奏を構築した、N響ゲストコンサートマスター白井圭の名技で聴けるのは嬉しい限り。理想的なモーツァルト体験への期待が膨らむ。
文:林昌英
(ぶらあぼ2022年3月号より)

2022.4/3(日)15:00 Hakuju Hall
問:Hakuju Hall チケットセンター03-5478-8700 
https://hakujuhall.jp