小林研一郎(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団

巨匠のタクトで聴くふたつの「第4番」

小林研一郎(c)山本倫子

 この4月、春の訪れとともに日本フィルに熱い風を吹き込むのが桂冠名誉指揮者の小林研一郎。シューマンの交響曲第4番とブラームスの交響曲第4番を組み合わせた重厚なプログラムを披露する。ドイツ・ロマン派を代表するふたりの作曲家によるダブル「第4番」プログラム。聴きごたえ十分の傑作が並んだ。

 シューマンとブラームスといえば師弟関係で結ばれたふたり。若き日のブラームスは名ヴァイオリニストのヨアヒムの助言に従って、デュッセルドルフのシューマン夫妻を訪れた。シューマンは若者が持参した作品とその卓越したピアノ演奏に驚嘆し、自らが創刊した『新音楽時報』に「新しい道」と題した一文を寄せてブラームスを絶賛した。やがてブラームスはシューマン夫人であるクララとの結びつきを深めたこともあって、この師弟は語られることが多い間柄だ。ともに交響曲を第4番まで書いたという共通項も持つ。

 もっとも、同じ第4番といってもシューマンとブラームスでは位置づけがずいぶん異なる。シューマンの交響曲第4番は、実際には2番目に書かれた交響曲で、後に改訂されて出版された際に第4番の番号が付いた。作曲は1841年、まだシューマンは31歳で、クララとの結婚の翌年にあたる。若き日のパッションと後年の成熟した筆が渾然一体となっている。一方、ブラームスの交響曲第4番は作曲者最後の交響曲。巨匠の到達点ともいうべき独自の境地が開かれる。傘寿を越えたマエストロが日本フィルとともにどんな音楽を生み出してくれるのか。このコンビでなければ実現できない深い味わいを堪能したい。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2022年3月号より)

第739回 東京定期演奏会〈春季〉 
2022.4/1(金)19:00、4/2(土)14:00 サントリーホール
問:日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 
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