30年以上コンサートマスターを務めるオーケストラとともに、バルトークの2つの協奏曲をライブ録音する。これだけでも賞賛に値するが、高水準の演奏でCD化が実現となれば、世界でも稀少な偉業だろう。国内屈指の名人、豊嶋泰嗣のデビュー35周年記念アルバム。第1番は独特のロマンと妖気を丁寧に表現し、超難曲の第2番は高い集中力と豊かな音色で見事に弾きこなし、曲の現代性と民族性を明らかにする。新日本フィルも個性的な指揮者陣の解釈を踏まえつつ、万全な演奏でソロを支える。豊嶋の記念であるばかりか、日本のソリストと楽団が到達した境地をも示す一枚となった。
文:林昌英
(ぶらあぼ2022年2月号より)
【information】
SACD『バルトーク:ヴァイオリン協奏曲第1番、第2番 /豊嶋泰嗣&井上道義&上岡敏之&新日本フィル』
バルトーク:ヴァイオリン協奏曲第1番、同第2番
豊嶋泰嗣(ヴァイオリン)
井上道義 上岡敏之(以上指揮)
新日本フィルハーモニー交響楽団
2021年4月、2018年3月、すみだトリフォニーホール(ライブ)
オクタヴィア・レコード
OVCL-00768 ¥3520(税込)