シューベルトの幻の作品を発見!?
シューベルトのピアノ協奏曲の世界初演(!?)……これは大ニュースだ。実はこの曲、シューベルトの最後のピアノ・ソナタ第21番を吉松隆が編曲したもの。吉松本人によると、「『あまりに大好きな曲なので、オーケストラと一緒に鳴らしてみたい』…という純粋な遊び心」から約20年前に編曲したものの、「お蔵入りになってしまった幻の作品」だという。吉松といえば、現代にあって抒情的な調性音楽を多数生み出し、東京2020オリンピックの開会式でも交響曲「地球(テラ)にて」が使われて話題を呼んだ人気作曲家。当作を発掘して指揮するのがその作品に傾注してきた“吉松の伝道師”藤岡幸夫、ピアノ独奏が吉松作品とシューベルトの第21番を大の十八番にしている詩情豊かな名手・田部京子とくれば、この上なく条件が揃っている。ちなみに藤岡と田部は吉松のピアノ協奏曲「メモ・フローラ」を録音して美演を聴かせているし、吉松は当編曲でも田部の演奏を想定したというから、今回への期待はさらに増す。
この公演は東京シティ・フィルの1月のティアラこうとう定期。後半にはシベリウスの交響曲第1番が披露される。シベリウスは吉松も藤岡も愛してやまない作曲家。第1番は旋律美と北欧の空気感に溢れた名作だ。藤岡は首席客演指揮者を務める同楽団で、伊福部昭「サロメ」をはじめエキサイティングな快演を連発。充実著しい東京シティ・フィルに新鮮な活力をもたらしているだけに、ここも濃密でパッショネイトな音楽を堪能させてくれるに違いない。
あらゆる意味で要注目の当公演に、多くの人に足を運んでもらいたい。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2022年1月号より)
第67回 ティアラこうとう定期演奏会
2022.1/29 (土)15:00 ティアラこうとう
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002
https://www.cityphil.jp