2022年度 武満徹作曲賞 ファイナリスト決定

東京オペラシティ 2022年度 主催公演ラインナップ発表

 東京オペラシティ文化財団が故・武満徹の意志を引き継ぎ、1997年から実施しているオーケストラ作品の作曲コンクール「武満徹作曲賞」の譜面審査の結果が発表され、来年5月の本選演奏会に進む4名のファイナリストが決定した。同賞は、世界の若手作曲家の登竜門のひとつで、毎年一人の作曲家が審査に当たるのが大きな特徴。2022年度は、現代イギリスを代表する作曲家で、細川俊夫の師としても知られるブライアン・ファーニホウが、「コンポージアム2022」の一環として開催される本選演奏会で審査員を務める。

 24回目となる今回は、27の国や地域から80作品(うち79作品が正式に受理。日本からは18作品)のエントリーがあり、その中から4名がファイナリストに選出された。以下の4作品が、2022年5月29日に東京オペラシティ コンサートホールで篠﨑靖男指揮東京フィルハーモニー交響楽団によって演奏され、受賞作が決定する。

◎オマール・エルナンデス・ラソ(メキシコ)Omar Hernández Lazo
彼方からの冷たい痛み Inflamado de una álgida lejanía
この作品では動きの完全な流動性を見事に実現、聴き手に次の動きを予測させるが、それはきわめて高度に作り上げられた霞の介入によってつねに裏切られる運命にある。遠近感は音楽体験の重要な一面である。ここでは耳は固定されることなく、同時に内側に向かったり外側に向かったりする。

◎メフメット・オズカン(トルコ/ブルガリア)Mehmet Ӧzkan
管弦楽のための間奏曲《無秩序な哀歌》 Intermezzo for Orchestra “Anarchical Lament”
本作品では、力強く執拗で自信にあふれた作風に惹き付けられた。ときに形式の一貫性という問題は、その対極から ── すなわち、本作で容赦なく表明されているようにつじつまの合わない具体的な非連続性から ── アプローチするのがよいこともある。ただこの戦略を取ることのリスクはきわめて高い。なぜなら表面上の断絶が起こるたびに、作曲家は新たに意味の空白を乗り越えて生き延びなければならないからである。

◎アンドレア・マッテヴィ(イタリア)Andrea Mattevi
円の始まりと終わりの共通性 Comune il principio e la fine del cerchio  for symphonic orchestra
この曲では、明らかに規律は取れているのにそれがきわめて軽やかに伝達されている点が印象的だった。それによって予想外の出来事もいわば「裏口」から取り込まれ、その存在を見苦しく主張する必要もない。形式的な面も発生的に提示され、高圧的に強要されることもない。オーケストラは細かく分解され、まるでタイル張りの床の交差するパターンのような、一連の光り輝くイメージへと解析される。
◎室元拓人(日本)Takuto Muromoto
ケベス ― 火群の環 KEBESU – Circle of Flame  for orchestra
本作品で感心させられたのは、オーケストラを個々の利用可能なリソースの集まりとしてではなく、一つの有機的なまとまりとして扱い、巧みにコントロールされたアンサンブル全体の流れの中で奏者たちが自らの役割を理解し、主張できている点である。曲のテクスチャーのそれぞれの層が、積み重なっている場合でも、正当性を持っているように見受けられる。その結果、機能的な透過性という興味深い感覚が生み出される。

(各曲についてのコメントは、譜面審査に当たったファーニホウによるもの/東京オペラシティのウェブサイトより転載)

ブライアン・ファーニホウ Brian Ferneyhough

コンポージアム2022「2022年度武満徹作曲賞本選演奏会」
2022.5/29(日)15:00 東京オペラシティ コンサートホール
審査員:ブライアン・ファーニホウ
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団 指揮:篠﨑靖男
https://www.operacity.jp/concert/award/

 また、併せて、開館25周年シーズンとなる東京オペラシティの2022年度主催公演ラインナップも発表された。コンポージアムでファーニホウ作品を演奏するアンサンブル・モデルンのほか、フランソワ゠グザヴィエ・ロト指揮ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団、レイフ・オヴェ・アンスネス(ピアノ/指揮)マーラー・チェンバー・オーケストラ、パーヴォ・ヤルヴィ指揮ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団など、注目のオーケストラの名前が並ぶ。また、ピエール゠ロラン・エマール(ピアノ)やフィリップ・ジャルスキー(カウンターテナー)らの来日も予定されており、話題の多いシーズンとなりそうだ。

東京オペラシティ
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