独自の旅路を歩むさすらいの圧倒的パフォーマンス
Bohemianist MasahiRo(ボヘミアニスト マサヒロ)。2009年東京オペラシティにてコンサートデビューしたヴァイオリニスト。自身の作・編曲作品を中心に演奏活動を行い、アルバムもリリース。自作の「バラード」はApple Music (日本) でトップ10入り。そして、今秋にはサントリーホールにて無伴奏公演を予定。というプロフィールは紹介されているが、その不思議な名前は苦い体験から生まれたという。
「4歳からヴァイオリンを続けていて音楽の道に進みたかったけれど、医者の家系だったことで諦めざるを得なくなり、受験もうまくいかなかった。結果が出ない状態で無為に過ごし、適当に時間を潰して…何の身分も無いことを痛感する日々で、自分はボヘミアンだという気持ちになっていきました。もともとジプシー音楽にシンパシーを感じていたこともあり、ヴァイオリニストとボヘミアンをかけあわせた造語“ボヘミアニスト”と名乗ることにしたのです」
その後、音楽の道に進む決意をし直し、夜間学部のある普通の大学に通いながら昼は練習、途中から音楽の仕事も入り始めた。仕事も順調に進んでいくなか、決定的な経験をする。
「ハンガリーを訪れたとき、添乗員さんの計らいで演奏の場が準備されて、弾き始めたらかなりの盛り上がりで、お客さんにサインまでする事態に(笑)。翌日にはブダペストの有名なジプシー楽団のメンバーと酒場で演奏して、こちらもうまくいきました。この体験は本当に大きかったです」
卒業後は様々なアルバイトをして過ごすなか、日本のあるオーディションで「独自の情熱、絶対に人に負けないものを持つ新進演奏家」として選ばれた。その審査をしたピアニストの斎藤真理恵は、彼のパフォーマンスにほれ込み、その後共演を重ね、本公演では監修を務めている。新たな理解者も得て、独自のライブで成功を重ねながら、サントリーホールブルーローズ公演に至った。
「レパートリーは暗譜で150曲以上。その瞬間ごとに一番表現したいものを弾くので、最近はプログラムを作らない。だから“リサイタル”じゃなくて“ライブ”なんです。今回はクラシックの殿堂で、自分の思いをヴァイオリンで主張できる。ある意味挑戦ですが本当に楽しみです」
監修の斎藤も「彼の演奏はロマでもクラシックでもない、“マサヒロというジャンル”としか言いようがない。成熟してきた彼をサントリーホールでぜひ聴いてほしい」と熱心に語る。
ボヘミアニストという名の裏にあるのは、自由への限りない希求。全体で約90分予定の“ライブ”で、周囲や聴衆を引き込む、命がけのパフォーマンスを炸裂させることだろう。
取材・文:林 昌英
(ぶらあぼ2021年11月号より)
Private Note Live PREMIUM
Bohemianist MasahiRo 無伴奏ヴァイオリンライブ【予定枚数終了】
2021.11/27(土)19:00 サントリーホール ブルーローズ(小)
問:Private Note Artists 090-4845-3348
https://privatenoteconcert.wixsite.com/officialwebsite