宮谷理香(ピアノ)

「前奏曲」に未来への希望を込めて

(c)Akira Muto

 ピアニストの宮谷理香は、第13回ショパン国際ピアノコンクール第5位入賞以降、創意に溢れたプログラムによるリサイタルをはじめ、室内楽にレクチャーコンサートなど、多彩な活動を通してピアノの魅力を伝えてきた。近年は毎年リリースされているCDがどれも高い評価を得ており、常に進化する音楽家として輝き続けている宮谷。今年で演奏活動25周年を迎え、新譜のリリースと記念リサイタルの開催が決定している。テーマは「未来への前奏曲」。どのような想いが込められているのだろう。

 「CDとリサイタルの計画を立てたのは昨年のことでした。ちょうどコロナ禍で世の中が停滞しはじめていた時期。“閉塞感”という言葉をよく聞くようになり、多くの人が大変な思いをされているなか、音楽で何ができるだろうと考え、この状況が“はじまり”や未来を見据えるものになれば…と思ったとき、『前奏曲』という案が浮かんできたのです」

 確かに、いまの状況を新たな未来への“前奏曲”と考えることで、前向きな希望が生まれてくる気がする。そして宮谷の音色はそれを優しく後押ししてくれるようなあたたかさがある。

 「皆様それぞれが迎える、新しい何かのはじまりに寄り添うものになれば…という想いを込めています。また私自身の25周年記念も確かに節目ではあるのですが、人生100年時代、これからも長く弾いていく、そのはじまりの意味も含んでいるのです」

 ディスク、リサイタルともに宮谷にとってかけがえのない存在であるショパンの「前奏曲」をはじめ、バッハやショスタコーヴィチ、フランクの作品が並ぶ。

 「昨年ショパンコンクール入賞25周年を迎えたこともあり、やはりショパンは外せないなと。そこでショパンを中心にして、彼の前奏曲に大きな影響を与えたバッハの『平均律』が思い浮かび、さらにのちの作曲家たちの作品へとつながって…。鍵盤音楽史を俯瞰するようなプログラムを意識して組みました。東京でのリサイタルではさらにドビュッシーとラフマニノフが加わり、より多様なピアニズムをお楽しみいただけると思います」

 宮谷の美しい音色、つねに歌を感じさせる音楽運びを堪能できるプログラムというだけでなく、心を前向きに解き放ってくれるはずだ。

 「きっと今、多くの方が狭いところに押し込められてしまっているような感覚を味わっていると思います。CD、リサイタルそれぞれお聴きくださった方の心が広いところに解放されたような感覚を味わっていただけたら、とても嬉しいです」
取材・文:長井進之介
(ぶらあぼ2021年10月号より)

宮谷理香 ピアノリサイタル 未来への前奏曲
2021.10/17(日)14:00 東京文化会館(小)

問:コンサートイマジン03-3235-3777
http://www.concert.co.jp
http://www.miyatani.jp/rika/

他公演
10/3(日) コピスみよし(三芳町文化会館)(049-259-3211)
10/10(日) 高崎シューベルトサロン(ピアノプラザ群馬内)(027-363-1262)
11/13(土) あづみ野コンサートホール(0263-82-6419)
12/3(金) 北國新聞社 赤羽ホール(076-260-3555) 他
※各公演の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。

SACD『Prelude 前奏曲』
オクタヴィア・レコード
OVCT-00188

¥3520(税込)
2021.10/20(水)発売